作品情報

前世官能小説家、イケメン王太子様とえっちに革命起こします!※但し処女ですが

「……この体位、めちゃくちゃエロいね」

あらすじ

「……この体位、めちゃくちゃエロいね」

キスは軽くえっちは挿れて出すだけが常識の世界で、男爵令嬢ラウラは前世を思い出した。『マグロ状態など面白くない。えっちに革命を!』と官能小説家としての才能を惜しみなく注ぎ、令嬢としては行き遅れたものの、自著は〝閨事の教本〟として大流行。挿絵担当の美青年、正体不明の相棒・スザクとともに、ファン待望の次作に向けて打ち合わせをしていた――が、絵心が壊滅的なため体位を伝えるだけでも一苦労。「ラウラが見せてくれればいいだけの話でしょ」にっこり微笑む彼に促され、次作のテーマ『四十八手』を二人で実演することに!?(なによこの羞恥プレイーーッッ!)前世も現世も立派な処女のラウラ――ことアリス先生、大ピンチです!

作品情報

作:姫沙羅
絵:むいこ

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9/6(金)ピッコマ様にて先行配信開始!(一部ストア様にて予約受付中!)

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 プロローグ ~本の世界~

『薄闇に微かな照明の光が揺れ、男女の影がうっすらと浮かび上がる。
「……ス、スタン……」
「ん? どうかした?」
 不安気に響いた少女の声に、仄かに愉し気な色が混じった青年の笑みが零れ落ちる。……いや。実際に「スタン」と呼ばれた青年はこの状況を愉しんでいるのだろう。その証拠に、スタンの口元は愉悦を含み、少女を見つめる黒い瞳は、優し気ながらもどこか意地の悪さが滲んでいた。
「ヘレナ」
「……ぁ……っ」
 手にした布地でそっと目元を覆い隠され、大人しくそれを受け入れたことを褒めるように優しく頬を撫でられ、少女――ヘレナの肩がびくりと震えた。
「ん……っ」
 再度揺れた華奢な肩は、微かな光に照らし出され、白い肌を浮き彫りにさせているに違いない。それどころか、寝台に仰向けで寝かされているヘレナは、一切衣を纏っていなかった。
「ゃ……っ」
 ヘレナが嫌々と小さく頭を振れば、白いシーツの上へ長い黒髪が散る。
「ヘレナ?」
 掠れて響いたヘレナの声に、スタンからはくすりという小さな笑みが零れ落ちた。
「これ……っ、外し、て……っ」
「だぁめ」
 ヘレナのか細い要求は、甘く囁くスタンに拒否される。
「少し触っただけでこんなにびくびく反応しておいて、嫌なんてはずないよね?」
「や……っ!」
 顎のラインから白い首筋を指先で辿られ、ヘレナの喉がびくっと仰け反った。
「あ……っ」
「可愛い」
 そのまま肩口から頭上で一纏めにされた腕の内側を滑っていくスタンの指先に、ヘレナの口からは甘く熱い吐息が漏れる。
「ぁ……っ、あ……」
 スタンの長い指が行きつく先。そこには、ヘレナの抵抗を奪うかのように、両手首を拘束する白い布地が格子状の寝台の背もたれに繋げられていた。
「ゃだ……ぁ……っ、外し……っ」
 先ほどから漏れる懇願は、両手を自由にしてほしいということか。それとも。
「視覚を奪われると感覚が鋭くなるよね?」
 ヘレナの目元を覆い隠す白い生地に、スタンの喉元がくつくつと愉しそうに震えた。
「ぁあ、ん……っ!」
 スタンの指先は触れるか触れないかの優しさでヘレナの両腕を滑っていき、ヘレナはびくびくと身悶えながら甘い嬌声を響かせる。
「スタ、ン……ッ」
「ヘレナ」
 訴えかけるヘレナの呼び声は、スタンの優しく甘い声に制される。
「……ぁ……っ」
「敏感で可愛いね」
「あ……っ、ぁ……っ」
 くす、と耳元で囁き、首筋を伝い降りていく唇の感触に、ヘレナの拘束された腕が小さく震える。
「ゃ、あ……っ、スタ、ン……ッ」
「いや、じゃなくて、気持ちいい、でしょ?」
「あ……!」
 指先と唇での愛撫は胸元へ移り、柔らかな膨らみの周りを円を描くように刺激され、ヘレナの細腰はびくりっ、と反応する。
「いつもより感度が高くなってる」
「――っ!」
「自分でもわかるでしょ?」
 くすくすと愉しそうに向けられる問いかけに、ヘレナの全身は一瞬にして熱を持つ。
 たしかに、自由が利かず、視覚を奪われた状態では、他の感覚が鋭くなるのか、いつもより過敏になっている自覚がヘレナにもあった。
 ただでさえ快楽に弱い身体が、いつも以上の快感を覚えてお腹の奥から熱い蜜が溢れ出てくるのを感じる。
「あ……っ!」
 胸元でぷっくりと実った果実を舌先で舐め取られ、びくりっ、と腰が浮く。
「あ……っ! あ……っ、ぁあ、ん……っ」
 もう片方の果実も指先でくるくると刺激され、優しく這うような舌先での愛撫も合わさって、ヘレナの口からはひっきりなしに高い嬌声が上がる。
「こんなになってるのに」
「ぁあ……っ、ん……!」
 くす、と零されるからかいの声に、それだけでヘレナの華奢な身体は反応してしまう。
「ぁ……っ、や……っ」
「そんなに気に入った?」
「ちが……っ、ぁぁあ……! ん……っ」
 くすくすと笑いながらすっかり実った赤い果実を意地悪く甘噛みされ、ヘレナは悲鳴のような嬌声を響かせながら背筋を仰け反らせた。
「気持ちよさそうだね?」
「ぁあ……!」
 意地悪く囁く声にさえ感じ入り、ヘレナはただされるがまま身悶えて甘い啼き声を上げることしかできなくなる。
「ぁっ、あ……っ、ぁあ……っ、ん……」
「かわいい」
「……あ……っ! ゃ……っ、スタン……ッ、だ、め……ぇ……っ!」
 ふるふると頭を振って抵抗の意を示すも、自然と突き出すような格好になってしまった胸元は、淫らな行為をもっともっとと強請っていた。
「あっ、あ、あ……っ」
「すごいね、ヘレナ。もっと乱れて?」
「ぁあっ、ん……っ!」
 硬くなった果実へカリ、と歯を立てられ、それと同時にもう片方の果実も指先で摘み取られ、白い布地の下に隠されたヘレナの目尻には生理的な涙が滲んだ。
「あっ、あ……っ、あ……!」
「ヘレナ」
「……スタ、ン……ッ」
 愛おし気な呼びかけに、ヘレナはスタンへ縋るような声を上げ――……。』

 一話 彼女の前世は官能小説家

「ラウラーーッ!」
「!?」
 こめかみの血管が完全に浮き上がっている男性の叫びに、動きやすさを重視した水色の簡易ドレスを着た人物――ラウラは、思わず耳を塞ぎながらびくりと肩を震わせた。
「えと……、お父様……?」
 そっと顔を上げたラウラの蒼い瞳には、自分と同じ黒髪をした父親の、怒り心頭といった様子が映り込む。
「……どうかしまして?」
 耳から手を外しながらおずおずと問いかけるも、父親の怒りの原因は、その手に持った本を見れば一目瞭然だった。
 そもそも、まだお昼にもならない時間帯。多忙な父親が家に帰るや否や仕事部屋へラウラを呼び出した時から、こうなることはわかっていたような気がする。
 それでも、ふわふわとした長い髪を揺らしながら父親の顔を窺えば、その肩はわなわなと震えた。
「『どうかしまして?』ではないだろう……!」
 これと似た不毛な会話を、もう何度繰り返してきただろう。
 いい加減諦めればいいのにと溜め息をつきたくなりつつも、ラウラは涼しい顔で事務机越しに父親に対峙する。
「とりあえず落ち着いて下さいませ、お父様。血圧が上がって倒れでもしたら大変ですわ」
「そんな心配をするくらいなら、最初から私に心労をかけるな……!」
 今にも机に乗り上げてこちらまで迫ってきそうな父親の勢いに、ラウラの眉は困ったように引き下がる。
「心労……、って……。わたしはお父様にご迷惑がかかるようなことはなにもしていませんけれど」
「どの口がそれを言う……っ!」
 たしかに全く苦労も迷惑もかけていないかと言えば多少思うところはあるものの、総合的に判断すると、そんな父親の心労などたいしたことはないとラウラは考えている。
 そう――、ラウラの父親が頭を抱える、娘についての悩みごととは。
「お前はまた……っ、こんないかがわしい本を書いて……!」
 机に叩きつける勢いで広げられた書物のそのページには、ご丁寧にも官能的な挿絵が描かれていて、ラウラは思わず「あらやだ」と口元を手で覆ってしまう。
「三日前に出したばかりの新作……」
「こんな……っ。こんな話を……っ!」
 言葉にならずに唇を震わせる父親の気持ちがわからない……わけでもない。
 そこに描かれている美しい女性は、衣をなにも身に着けていない一方で、目元だけは白い布地で隠され、さらには同じような白い布地によって頭上で両手首を縛り上げられていた。
 そんな本の著者が自分の娘だったとしたら、世の中の大抵の父親はラウラの父親と同じ反応をするだろう。
「お前は……っ! 恥ずかしくないのか!」
 必死の形相で訴えかけてくる父親に、ラウラの眉間には複雑そうな皺が寄る。
「その本をしっかり読んでおきながらなにを言ってらっしゃるんですの」
 そういったセリフが出てくるということは、つまりはそういうことだ。
 説得力の欠片もないとばかりに大袈裟な溜め息を吐き出すと、父親の眉間の血管がぷつりと切れるような音がした。
「ラウラーーッ!」
「……っ」
 至近距離からの大声に、ラウラは再び耳を塞ぐとぎゅっと強く目を瞑る。
「恥を知れ、恥を……!」
「恥……」
 手を外し、父親の言葉をラウラはしみじみと反芻する。
 ラウラにも年相応の羞恥心というものは存在しているが、この件に関する恥じらいについては、とっくの昔にどこかに置いてきた。――たぶん、前世あたりに。

(――つづきのお試し読みは各ストア様をご覧ください!)

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