「望んでくれるなら、俺はどこまででも風花を甘やかすのに」
あらすじ
「望んでくれるなら、俺はどこまででも風花を甘やかすのに」
自身の運命を変えようと『社長令嬢』という肩書を隠し自立を図る風花。とある休日、彼女は出先で犯人を追いかける刑事に遭遇する。その刑事はなんと、初恋の人であり憧れの幼なじみ・紫苑だった。流れで家に送り届けてもらう風花だったが、彼女が住むセキュリティ皆無のおんぼろアパートを見た彼は驚愕。あれよあれよという間に、風花は御曹司である紫苑の元に引き取られることとなった。「幼なじみから脱却したい」大人になった彼の蕩ける甘さにときめく彼女の背後には、不審な視線があって……。
作品情報
作:桜旗とうか
絵:岡舘いまり
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本文お試し読み
プロローグ
穏やかに、のんびりと過ごすはずだった午後。
「んっ……あぁ……っ」
戯れのように触れ合っていたのに、気づけば淫靡な音を響かせて交わり合っていた。
「風花《ふうか》、もっと腰上げて」
ソファの上でうつ伏せにされ、後ろから腰をぐいと掴まれる。突っ張っていた四肢は自分の身体を支えることもできなくなっていた。
「は……っあ……んっあ……」
ぱちゅっと肌のぶつかる音とともに凶暴な楔が膣壁を穿つ。
「あぁっ……、あ、しーちゃ……、深……あっ、ふ……」
何度も揺すり上げられ、最奥を突き上げられる。タイミングを合わせて腰を引き寄せられると、目の前が白くなるほどの快感と衝撃が走った。
「は……あぁっ、んっ……」
ぬちゅぬちゅと粘液を混ぜ合って、彼の熱に溺れていく。ずっとこのまま、彼の腕に抱かれていたい。
「風花、こっち向いて」
顔を後ろに向けさせられると、覆い被さった彼に呼吸を奪われる。舌を絡ませ、感覚のすべてで繋がっていく。
後ろから伸ばされる手に胸を揉みしだかれ、少し荒っぽい手つきに彼が余裕をなくしていくのが見て取れた。
こういう瞬間が好きだ。
「しーちゃん……もっとして……?」
ねだれば、彼は恍惚とした表情で一度目を伏せる。端整な顔立ちが快楽の苦悶にわずか、歪む。
「んっ……、ふ……」
ぐちゅぐちゅと蠢く膣壁が熱塊に強くかき回された。
結合部から、愛液が太腿を伝って流れていく。
「風花の中、とろとろだな……」
耳を舐めながら囁かれる声は、頭の芯をじんじんと痺れさせる。熱と色を帯びて、甘く響く彼の声に下腹部がきゅうきゅうと疼いた。
「……しーちゃんが好きだから、だよ……」
「そんなこと言われたら、加減できなくなるってわかってる?」
腕を掴まれ、後ろに引かれる。伏していた身体が仰け反るように起こされると、彼が容赦なく楔を突き入れてきた。
「ああぁっ……、あ、はっ……んっあ……っ」
ぱんぱんと肌を激しく打ち付け合い、激しく責め立てられる。抽送を繰り返される肉壁が鈍く痺れて快感を増長させていく。
「あっ……、そこ……だめ、あぁっ……」
弱い場所を何度も突かれ、下腹部が灼けるように熱くなる。目の前が白くなって、意識が飛んでしまいそうだ。
「気持ちいいよ……風花」
両腕を掴まれて逃げ場のない身体が強く揺さぶられる。
「は……っあ、ああっ……んっ!」
大きく膨らむ快感が一気に弾け、全身がこわばった。
「風花……ッ」
最奥を貫かれた瞬間、絶頂の波へと飲み込まれる。ガクガクと腰も足も震え、肉襞がどくどくと脈打つ肉塊を締めつけた。
皮膜越しに吐き出される熱を感じながら、耐えきれずにソファへと沈み込んだ。
ずるりと大きな質量が引き抜かれる感覚にぞくぞくと背筋が震える。
「風花……平気?」
私の頭を一度撫でたあと、避妊具を処理する彼にすり寄った。
「大丈夫だけど……」
すりすりと胸元に甘える。ずっとこうしたかった。たくさん撫でられたくて、甘えたくて、たくさん満たされたかった。
「ねえ、しーちゃん」
彼の膝を跨ぎ、彼に身体を押しつける。
「もっと……だめ?」
額に手を当てて天井を仰ぎ見る彼の姿に、たぶん間違えたと焦った。でも、腰をぐいと引き寄せられる。
「いいよ」
「嫌じゃない?」
「そんなことはないけど、風花には敵わないなぁって思った」
ソファにそっと寝かされ、覆い被さってくる重みをぎゅっと抱きしめた。
「しーちゃんをいっぱい感じたいんだよ」
この人と一緒にいられることが幸せで、うれしい。
「俺も」
キスを交わしたあと、その日は一日貪るように肌を重ね続けた。
一
ドラマチックな出来事なんて、普通に暮らしていればそうそう起こるはずがないと、二十七歳にもなれば知っている。
「警察だ! 止まれ!」
そんなセリフも、普通では聞かないと思っていた。
秋の足音が聞こえ始める、ある土曜日。鋭く発せられた声に賑やかなショッピング街がざわめいた。
大通りの少し向こうから、人が走ってくる。一人は白い服とキャップを被った、たぶん男性。その男性をスーツ姿の男性が追いかけていた。
ぼうっとその姿を見つめる。すごい早さで横断歩道を駆け抜けてくる二人の男性に、人びとが自然と道を空けた。私も一歩、店側へ下がる。
白い服とキャップ姿の男性が私の前を走って行く。スーツ姿の男性がそのあとを追いかけてくると、腕が伸びて先を走っていた男性の白い服をがしっと掴んだ。
「止まれっつってんだろうが!」
人が空を舞う。
知らなかった。人がこんなにも軽々と、鮮やかに空を飛んでいくなんて。
呆然とその光景を見つめた。スーツ姿の男性が見事な背負い投げを決め、喝采を浴びる。そして、スーツ姿の男性と目が合った。
「……風花……?」
幼なじみである滝津紫苑《たきつしおん》くんとの再会は、騒々しい休日の午後だった。
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