「――可愛い顔されると、もっと苛めたくなる」
あらすじ
「――可愛い顔されると、もっと苛めたくなる」
副業禁止の製剤研究所に勤めるありさは、ある日、酔い潰れたところを親会社の御曹司・透に介抱された。密かに行っている配信活動の副業がバレ、大ピンチに陥ったありさに、彼は冷徹に条件を突き付ける。「誰にも言わない代わりに、俺の言うことを聞くこと――簡単に言えば、俺のペットになれって話」愉しげな色が滲む徹の意図がわからず、彼女は「いけ好かない男に負けたくない」という気持ちから、その条件を引き受けることに。不本意な主従関係――のはずが、彼の態度は時折、まるで恋人のように甘く優しく変わる。弱みを握られ、好き勝手にされているはずなのに、指先や眼差しはどこまでも甘美で、ありさの胸の奥底は熱く疼き始めて……。
作品情報
作:春宮ともみ
絵:紺子ゆきめ
配信ストア様一覧
12/20(金)各ストア様にて順次配信開始!(一部ストア様にて予約受付中!)
本文お試し読み
◆プロローグ
真冬とはいえ、明るい陽射しが差し込むリビングはひどく暖かい。それがより一層、この男に身体を暴かれていることの異常さを際立たせていた。
「んっ……ふ、ぅっ……」
どうして――こんな腹黒に組み敷かれて、好き勝手にされているのだろう。身体の芯からじわじわとこみ上げてくる快楽に抗うべく、ありさはきゅっと固く目を瞑った。
「そんな可愛い顔されると、もっと苛めたくなる。……ねえ、ありさ?」
どこか嗜虐的な笑みを浮かべた男は、ありさの耳朶に歯を立てながら囁いた。鼓膜に直接注ぎ込まれるテノールが、ありさの脳をじわじわと痺れさせていく。
「あっ……ん、」
「耳、弱いよね。可愛い」
「やぁっ……そこで、喋らないでっ……」
「……どうして?」
ありさの耳を苛めながら、彼は愉しそうに笑う。その吐息がくすぐったくて身を捩ると、逃さないとばかりに腰を掴まれて引き寄せられた。そのままゆっくりとした律動が始まる。
「んっ……あぁっ……!」
「はは、また締まった。ねえ、そんなに気持ちいい? 俺のコレ」
この行為は――ただただ、彼との間にある歪な上下関係をありさに知らしめるためだけのものなのに。
ありさ自身が望んで――この男に抱かれているわけではないのに。
――なん、でっ……!
身体を蝕む快楽に身を委ねたくないのに、心とは裏腹にありさの身体は彼から与えられる熱を従順に受け入れていく。
「気持ちいいよね? ありさ」
「や、ちがっ……あっ……!」
「違わない。こんなに締め付けて……俺のこと離してくれないくせに」
男はそう言ってくつりと喉の奥を鳴らすと、ゆっくりと腰を引き、ありさの最奥を穿った。行き止まりの先まで穿たれる感覚に、思わずはしたない声が零れる。
「ああぁっ! あ、んっ……」
汗ばんだ手のひらでソファの縁を掴んで快楽を逃がそうとするものの、そんな些細な抵抗など無意味だった。
身体を内側から押し広げられる圧迫感が、苦しいはずなのに――それすらも甘く感じてしまう自分がいる。彼に触れられたところから溶けていってしまいそうなほどの灼熱の感覚が、ありさの思考を苛んでいく。
「っ……は、……締めすぎ。ありさの身体は正直だね?」
ありさの身体を揺さぶりながら、的確に良いところを突いてくるのだから質が悪い。
人畜無害とでも言いたげな天使のような顔をして、その実、腹の中で何を考えているのか分からない。
ありさの心情などお構いなしに抱いているはずなのに、触れる指先は妙に優しくて。そのチグハグさが、余計にありさの心を掻き乱していく。
「や、だぁっ……あっ……もうっ……」
ぐちゅぐちゅと結合部からは卑猥な水音が響いている。その音がさらに羞恥を煽って、ありさの身体を昂らせた。頭がふわふわとして、なにも考えられなくなっていく。生理的な涙がこめかみを伝い、ソファに染みを作っていった。
「はは、泣いちゃうくらい気持ちいい? 可愛いね、ありさ……」
「やぁっ……も、だめっ……あっ、」
「いいよ。ありさの好きなところ、いっぱい突いてあげるから」
ひどく甘やかすような声を出した彼によって、ありさは快楽の高みへと押し上げられていく。
全身が彼で満たされて――まるで本当に恋人同士のような錯覚に陥ってしまう。
「あぁっ、んっ、やぁぁっ……!」
ありさの限界を察したのか、彼はさらに腰を穿つ速度を速めた。生理的な涙でぼやけた視界の先、欲に塗れた瞳と視線が絡み合う。
「やぁっ……あっ、んぁっ……もうっ……!」
「……ほら、ありさ」
低く甘い声とともに、彼の指先がおとがいを掬っていく。そうして近づく端正な彼の唇。睦みあうようなその口付けが、今は甘美な毒のように感じられて仕方ない。
「……っ、ふ、……あっ……!」
快楽に蕩けそうになる思考の中で、ありさは始まりの日《・・・・・》に想いを馳せながら、そっと目を閉じた。
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