「俺はきみが羨ましい。あの子の成長を見守っていられたんだから」
あらすじ
「俺はきみが羨ましい。あの子の成長を見守っていられたんだから」
伯爵令嬢クラウディアは、食事会で出会い惹かれ合った次期侯爵カルミネと情熱の一夜を過ごす。
それきり再会が叶わないまま時が経ち、クラウディアの妊娠が発覚する。風の噂で婚約したと聞いたカルミネの立場を案じ、おなかの子の父親が誰か決して言おうとしないクラウディア。
激怒したクラウディアの父親は、彼女を家から追い出してしまうが……。
作品情報
作:日野さつき
絵:whimhalooo
デザイン:RIRI Design Works
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移ろい、失われるものがあるのだと知っている。
クラウディアは自分を組み敷く男の顔を見上げた。
手を伸ばし頬を撫でると、彼はクラウディアの親指にそっと歯を立ててくる。皮膚を押す白い歯の感触はくすぐったく、クラウディアはのどの奥で笑う。ひそやかなその声を聞いてか、彼はわずかにあごの力を強くした。
たったそれだけのことなのに、悦びがこみ上げてくる。クラウディアはひどく満たされた気分になっていた。
おたがいが密着した下腹部には、歯の感触以上にクラウディアの肌を――肉を押す圧力があった。
「焦らさないでくれ、もう待つのは飽き飽きなんだ」
譫言のような声とともに強張りを強く押しつけ、彼は腰を前後させてくる。その先端に濡れた感触があり、それはクラウディアの淫欲の呼び水になった。
強まっていく身体の芯の疼き――それを鎮める方法はひとつだけだ。
クラウディアが胸を開くように身体の力を抜いていくと、彼は熱を帯びた声で唸った。欲情しきったその声がクラウディアは好きだった。品行方正な彼のけだものじみた顔を、クラウディアだけが知っている。理性を捨てた彼の腰がどれほど獰猛かは、クラウディアの身体だけに刻みつけられていた。
さんざん愛撫を受けたクラウディアの身体はたっぷりと潤い、彼の手が膝にかかるとたやすく開いていく。
「これだけ濡れてるんだ、もう……いいだろう?」
クラウディアは返事をする代わりに、足をみずから大きく開いてみせた。喜悦を浮かべた彼に向かい、両手を広げていく。
吸い寄せられるように彼の身体がのしかかってきた。密着し、反るほど強張った怒張がクラウディアに沈みこんでいく。
「あ……っあぁ……!」
淫肉の温度を味わう屹立に、クラウディアの理性は飲みこまれていった。絶頂へと追いこむような激しい抽挿を受け、クラウディアは恍惚とした甘い声を上げはじめていた。
「う、ぁん……っ、あ……っ、もっと、もっと……抱きしめて……っ」
クラウディアは彼と情欲を確かめ合う時間が好きだった。なにも飾ることなく、剥き出しの欲望でおたがいを慰め合う。ふたりの間のそれは、おそらく移ろいもせず失われもしない。彼と交わるたびに、常にクラウディアも彼もけだもののように貪り合っていた。
「い、い……っ、こ、このまま……いかせて……っ」
幾度となく彼に貫かれてきた絶頂の経験は、クラウディアの身体を淫蕩に育て上げていた。灯された情欲の火は燃え盛り、クラウディアの肉体を焦がしていく。
「……あっ……あぁっ、いや、気持ちいい……っ」
淫壁をふるわせ、クラウディアは叫ぶ――そう叫べるのも、彼の前でだけだった。
1
伯父のファウストが主催する食事会に招待されたが、クラウディアはあまり気乗りしていなかった。
毎年おこなわれる、親類間での食事会だ。
クラウディアは十六になったが、集まる年下の子供たちと同等に扱われることは事前に予測できていた。半人前とされ、おとなたちの話し相手というよりも、からかって遊ばれ酒の肴とおなじ扱いを受けるのだ。
その食事会は、血族のならわしとしての集会だといっていい。
気乗りしていなくとも、不参加は認められていない――とはいえ、クラウディアの生家であるサルヴァン伯爵家からは、兄グイドとふたりでの出席となっている。
軽いものだが両親は咳が続き、それを理由に欠席していた。父のグシオンと伯父のファウストは兄弟だ。弟と久々に会うのが楽しみだった、というファウスト伯父は、グシオン夫妻の体調をひどく心配していた。
「今日は出席してよかった」
親類が集まる食事会――年に一度、初夏に開かれる。
おとなと子供が一堂に会しての食事会である。
毎年主催は持ち回りで、各家が担当し所有する屋敷を開放していた。
今年担当になったファウスト伯父が所有する屋敷は川辺にあり、涼しい風が吹いて心地よかった。
一族が集まるため毎回食事会は規模が大きく、親類の屋敷はどこにいても喧噪に包まれていた。
子供をからかうおとなは決まっており、誰も彼らに近寄ろうとしない。彼らが酒を口にしていたらなおさらだ。しつこくからかわれるのは楽しくないもので、クラウディアを含めまだ成年していない子供たちは、銘々が屋敷内に散って過ごすのが常だった。
「こんなに楽しかったのは、はじめてかもしれません」
一族が集まるため、食事会でのもてなしは念入りなものになる。
なにも子供をからかって肴にするための集まりではない。せっかくだから子供たちを楽しませよう、と毎回おとなたちはそれぞれが贈り物も用意してくれる。ただただ可愛さがあまり、度が過ぎてしまうのだ。
今年の食事会では、ファウスト伯父はわざわざ花火の技師たちを呼び寄せていた。大きく空を見通すことのできる庭、その先にある河川で、夕方から花火が上げられることになっている。それに合わせ、近隣住人たちにも料理や飲みものを振る舞う算段だ。
主催のファウスト伯父は、常日頃から資産を気前よく領民に振る舞う気質だった。
昨日クラウディア兄妹が乗ってきた馬車から、すでに河川で場所取りをする近隣住人たちの姿が見られた。彼らに提供される料理がどんなものになるか詮索しなかったが、ファウスト伯父が手がけるのだ、豪勢なものになるのは間違いなさそうである。
「出席者はいつもの顔ぶれだと思っていたんです――カルミネさまのこと、存じ上げなくて」
花火と料理は楽しみだった。
その対局にある、酔ったおとなの肴にされる席。
それを考えると、どうしてもはやめに逃げ出すことを考えてしまう。
クラウディアは今年十六歳になり、成人に近づいていっている。
そのくらいの年齢になると、延々将来嫁ぐことや子を持ったときの心構えなど、説教じみた言葉が増えてくるのだ。ただの肴ではなくなっていく。現実的な説教が混じってくると、とてもうんざりさせられる。
ため息を噛みながら兄とともに屋敷を訪れ、だがクラウディアは、いまは心からの笑顔を浮かべていた。
「参加してよかった」
「俺もだよ――クラウディアと会えるんだったら、もっとはやく招待に応じていたらよかった」
こたえたカルミネはわずかに目を逸らし、それからクラウディアの瞳をまっすぐ見つめてくる。
その日はじめて顔を合わせたカルミネ・サルボレートは、クラウディアの目には若獅子のように映った。
長い明るい茶の髪は背中に流され、かたちのよいひたいがのぞいている。若獅子のようではあるが、獰猛さとかけ離れた穏やかな青い瞳を彼は持っていた。クラウディアを見つめ、見蕩れてしまうような深い色で揺れている。
「グイドと手紙でやり取りをしていて、今度の食事会はぜひって誘われていて……あいつの妹が、こんなに――その、きみと会えてほんとうに嬉しいんだ」
どこか緊張した様子で話すカルミネに、クラウディアは微笑んでいた。
彼だけでなく、クラウディアも緊張している。
胸がひどく高鳴っていて、彼もまたそうなのだとクラウディアは確信していた。高鳴りだけでなく、頬を熱くする理由も一緒なのだとわかっている。
――恋をした。
一目見て恋に落ちるなど、これまで信じたことはなかった。乳母の語る寝物語に登場する、清い姫君が体験するものでしかないと思っていたのだ。
おとなたちのおしゃべりの席から、クラウディアは早々に逃げ出していた。
自分が逃げ切るために、兄は置いてきている。親類たちにすれば、会話の種になれば誰でもいい――都合のいいことに、兄のグイドは最近婚約を交わしたばかりだった。訳知り顔の親類たちに囲まれ、いまごろは結婚の心構えを聞かされているだろう。
おとなたちを避けて動いているのは、クラウディアだけでなくいとこたちも同様だ。
うんざり顔のいとこたちも、到着早々に動き出していた。屋敷の使用人と花火師の作業を見物しに出ると話し、クラウディアを誘ってくれていた。
楽しそうだが、ちいさい子たちも同伴すると聞いている。そのにぎやかさを想像したクラウディアは、あまり乗り気になれずにいた。
頭痛がすると言い訳をし、クラウディアは二階の客間に引っこみ――それを物陰で聞き、心配して体調を尋ねに訪れてくれたのがカルミネだった。
行儀のいい挨拶をし、世間話をし――もっと話をしたくなったクラウディアは、カルミネを客間に招き入れていた。
それからふたりで過ごした時間はさほど長くなく、まだ短い会話しか交わしていない間柄だ。
――恋をするには十分な時間だった。
初対面の異性にこんな気持ちになったことは、これまでに一度もなかった。
客間のちいさな書棚に並ぶ本、その背表紙を話題にするうちに、ふたりは肩を寄せ合うようにしてソファに腰を下ろしていた。
おなじ作家の本を好んでいると知っただけで嬉しく、季節や料理――好みの合うものを探すような会話になっていった。
それも尽きると、短い時間苦手なものについて口にしていった。食器のこすれる音、昆虫、犬猫のあくび。そのころには指先が絡み合っていて、クラウディアは彼の指から逃れる気にならないでいた。
わずかに会話に間が空き、カルミネは自分が従軍していたことを告げてきた。
あまり話したくなさそうな声で、彼は戦火が起こらないまま十八からの四年間を軍で過ごした、と話した。
市井で暮らしているクラウディアの耳には、きな臭い話は入ってきていない。従軍は国に対する男子の義務でしかなく、兄のグイドもまた四年間を軍で過ごしている。兄も軍での経験を話してきたことはなかった。
「グイドとは軍で知り合ったんだ。遠縁だっていうのを上官がおもしろがって、引き合わせてくれて」
話しているカルミネの顔つきは暗く、なにがそんなに気がかりなのか、と思わずクラウディアは彼の頬に手をふれていた。
失礼だろうか、と躊躇したのは一瞬だった。
目が合った彼は、まったくいやがっていなかった。むしろその目が嬉しそうにほそめられた。クラウディアは指先で彼の瑞々しい頬をなぞり、手のひらで包んでみる。
「なにか……あったの?」
「……軍から戻ったからね、家では俺の縁談を決めようとしてる」
「そう、なの?」
胸の奥が急激に冷えていく。
こうしている間にも、彼の生家であるサルボレート侯爵家では、カルミネの妻にふさわしい女性を求めているかもしれない。
――決めてしまっているかも、しれない。
胸が苦しくなり、重苦しい痛みが広がっていく。
「でもまだ決まってはいないんだ。その……」
カルミネの瞳が逡巡するように動いていた。
「もし――きみに、将来を約束した相手が……」
彼がそこまで言葉を口にしたとき、おもてから大きな破裂音が聞こえてきた。
「きゃ……っ」
身をすくませると、カルミネの腕が身体をさらうように抱きすくめてくる。破裂音に続き、屋敷のどこからともなく歓声が聞こえてきた。知った声が混ざっていて、親類たちもおなじものに反応しているのだとわかる。
「クラウディア、この音……花火だよ」
カルミネの声に顔を上げ、クラウディアは開いていた窓のひとつに目を向ける。
ふたたびいくつもの破裂音が続いた。
すると薄青の空に、無数の光が散っていく。明るい空にあって、それはきらきらと輝きながら消えていった。試し打ちだろうか、日が落ちてから打ち上げたなら、きっと見事なものだろう。
「ご、ごめんなさい。急だったから、驚いてしまって」
彼の腕のなかにいる自分に気がつき、クラウディアは慌てて身体を引き剥がそうとした――しかしできない。カルミネの腕の力は強く、クラウディアを逃そうとしなかった。
「カ……カルミネさま」
「カルミネでいい……俺だって、クラウディアのことを呼び捨てにしてるだろ?」
――いいのだろうか、そんな親しい間柄のように気安く呼んで。
「カ……カルミ――」
思い切って彼の名を呼んでみようとすると、窓のあたりから声が聞こえてきた。
「クラウディア! いるか?」
兄の声だ。
「なあクラウディア、みんなで川までいかないかって!」
客間までやってくればいいものを、グイドは横着をして窓に呼びかけることにしたようだ。
「ちょっとグイド、クラウディアなら頭が痛いって」
いとこの声も聞こえ、クラウディアはカルミネと顔を見合わせた。
するりと彼の腕が解けていって、身体に残っている温度に驚かされる。そのぬくもりを逃さないよう、クラウディアは自分の身体に腕を回していた。
「俺は先にグイドのところにいくよ」
そういってカルミネが客間を出ていく。名残惜しい気持ちが胸に溢れていたが、彼を見送ったクラウディアは窓から顔をのぞかせた。
眼下では親類のこどもたちと兄のグイドが、二階のクラウディアを見上げていた。
「兄さまも川までいくの?」
「ああ、頭痛はどうだ? 風も気持ちいいだろうし、気分転換にいかないか?」
頭痛はただの方便だ。
「休んだら楽になったわ。降りていくから待ってて」
グイドにそう声をかけたとき、眼下の庭先にカルミネが姿を現していた。
川に着いたときには、花火の試し打ちは終わってしまっていた。
それでも技師たちは忙しく立ち働いている。見物に出かけたこどもたちは、気がつくと川をのぞいたり駆けっこをしたり、監督の使用人が顔を青くするぐらい奔放に遊び回っていた。
その顔ぶれのなかにカルミネはおらず、探すと彼は兄とふたり、川沿いの散歩に勤しんでいた。穏やかな表情で話す横顔を目にしただけで、散歩に出てきてよかった、と素直に思っている。
クラウディアは遠くの姿を時々確かめながら、遊ぼうと誘ってくる子供たちと手をつないで歩きはじめていた。
ほどなくして、近隣の住人の姿が増えはじめた――ファウスト伯父の領地で暮らすひとびとが、仕事を切り上げ集まりはじめたのだ。
彼らと入れ替わるように、クラウディアたちは屋敷に戻っていった。
屋敷ではすでに料理が用意され、おとなたちはとうに酒気を浴びはじめていた。楽しげに笑う声から、こどもたちは背を向け逃げていく。
食堂以外の庭やテラスなどにも、食事のためのテーブルが用意されていた。花火見物に最適な席はこどもたちのために確保され、川から戻った順に席に着いていく。
花火の打ち上げを待たず、どこからともなく乾杯の声が聞こえ、こどもたちも運ばれた料理に手をつけはじめた。
おとなから逃げたりしていたものの、周囲の顔はみな笑顔で、充実した時間を過ごしているようだった。
取り分けられた料理に手をつけようとするが、クラウディアはあまり食欲が湧かずにいる。それどころか背中や首の後ろなどに、ぞわぞわとしたものが広がっている始末だ。
楽しげな笑い声に一瞬頭痛を覚え、クラウディアはそっと席を立った。
クラウディアに目を向けた顔はいくつもあったが、誰も制止してこない。この食事会の場では、中座して叱りつけるおとなは近くにいなかった。
「いかがなさいましたか」
テーブルから距離を取ったあたりで、給仕のひとりが声をかけてきた。それを幸いとばかりに、クラウディアは温かいお茶を頼んだ。
「果物を使ったケーキも用意しておりますが、先にそちらも」
いくつものテーブルに分かれた食事会だ、行儀作法は二の次になっている。食べる順番も自分で決めていい。
「ありがとう、ちょっと川で身体を冷やしたみたいで……お茶をいただいたら、もう休もうと思います」
「……なにかお薬をお持ちしましょうか」
「いいえ、休めば大丈夫です」
そこまでひどい状態ではないが、食事会にはちいさな子供もいる。万一風邪なら、それをうつすようになるのはいやだった。
温かいお茶の揺れるカップで指先を温め、クラウディアは会を楽しむおとなたちの顔を遠くから眺める。
見つけることができないでいるが、どこかにカルミネがいるはずだ。クラウディアと違い、カルミネも兄もおとなたちのテーブルに着いている。
彼も会を楽しんでいるだろうか。もしそうなら、来年も食事会に参加してくれるかもしれない――もしそうなったら、彼のとなりには奥方が一緒かもしれないが。
クラウディアは通りかかった給仕にカップを預け、二階の客間に足を向けた。
食事会の翌日は宿酔いになるおとなが多いため、みな数日は宿泊しゆっくり過ごすことになっている。
クラウディアもほかの親類たちのように、数日間滞在する予定でいる。滞在期間中にカルミネと話をしたかった。自分の気持ちをどう扱ったらいいのかわからないが、いまはただ彼のことが知りたくてたまらない。
使用人が支度をしてくれた湯で身体を温めると、クラウディアは客間のベッドで身体をのばした。用意された夜着は薄いが、上掛けに包まっているうちに、寒気などどこかに消えてしまっている。
風邪ではなく、単に上着を着たらそれで済んだのかもしれない――そう思った途端に、クラウディアはベッドに入っていることがこの上なく退屈になっていた。
退屈をどうやって紛らわせようか、と悩むクラウディアの耳に、花火の上がる大きな音が届いていた。
破裂音と歓声があちこちから聞こえてくる。客間の窓越しに、大輪の花が夜空に開いては消えていく姿が見られた。
クラウディアもおもてから聞こえる声と一緒に、花火に声を上げ見蕩れていた。
「きれい……!」
眠る支度をしていなかったら、クラウディアもおもてに出ていっているところだ。
せめて、と閉じた窓の前に椅子を運び、そこでガラス越しにクラウディアは花火を眺めることにした。
もし花火を真下で見たらどうなるのだろう。生家であるサルヴァン家が食事会を主催することになるなら、そういった余興を提案してもいいかもしれない。
連なる破裂音とともに、光の花が夜空で満開になっていく。
――ここに彼がいたら、一緒に楽しめたかもしれない。
いまカルミネはどうしているだろう――脳裏に一度彼の姿が浮かび上がると、もうクラウディアの思考は占拠されてしまう。
花火に目を凝らしたクラウディアは、ガラスに映りこんだ姿に気がついた。ひどく驚かされ、クラウディアは椅子の上で飛び上がっていた。
「……カルミネ」
「ノックはしたんだけど……花火の音で聞こえなかったかな」
彼が客間に入ってきていた。
その顔に赤に光が投げかけられ、すぐに消える。
クラウディアは窓辺から離れた。その背でカーテンを閉めればよかった、とちらりと思う。おもてから姿を見られることはないだろうが、ほかの誰にも彼を見られたくなかった――独り占めしたくなっている。
「花火はいいのか?」
「いいの。カルミネと話ができたら、って思ってたから」
「具合が悪いって聞いたんだけど、いいのかな」
「すこし寒気がして……でもゆっくりしていたら、なんともなくなったわ」
言い訳じみた声が出ていたが、カルミネはとくに気にした様子はなかった。
花火の音に邪魔をされない場所――ふたりの足は、気がつけば薄暗いベッドに向かっていた。
並んで腰を下ろすと、カルミネの手がひたいにふれてくる。
ふれられたのはひたいなのに、クラウディアは背中や身体の奥がじわりと熱を持つのを感じた。
「……ちょっと熱いかな」
「そんなことないわ、もう平気だもの」
クラウディアの抗議にカルミネは軽く笑い、おたがいのひたいをふれ合わせてきた。自分よりもカルミネのほうがずっと熱い――気がする。
ふと目をやった自分の夜着があまりに薄く、クラウディアはなにか羽織るべきだった、とにわかに焦りはじめていた。慎みがないと思われていないだろうか。
「あ……」
カルミネの手に肩をつかまれ、クラウディアは我に返っていた。
クラウディアの隙のある格好など、彼の熱を帯びた瞳を前にすると、たいしたことではなくなっていく。
「クラウディア」
彼の鼻先が近づいてきて、クラウディアは目を閉じていた。
どうして彼が近づいてくるのか――ゆるやかな混乱の波に、クラウディアは爪先を浸している。
目を閉じたクラウディアのくちびるに、やわらかいものがふれてきた。
カルミネのくちびるが重なり、熱い舌がそっと割り入ってくる。
「ん……っ」
ひどく混乱していたが、クラウディアは抵抗をしなかった。
舌先同士でなぞり合っただけで、クラウディアはなにもかもを彼と分かち合っている気分になった。舌の裏側に滑りこんだ濡れた刺激に、クラウディアはその胸にすがりつく。
濡れた音が耳に届いていた。そのたびにクラウディアは耳からも快感を得、混乱が興奮に上書きされていく。
ぞくぞくした感覚が背中やうなじに広がっていき、くちびるが離れた後、クラウディアはなにも考えず、彼に抱きしめられるままになっていた。
「クラウディア……はじめて会ったときからきみのことが気になって……頭から離れないんだ」
熱に浮かされたような彼の声に、クラウディアは涙がこみ上げていた。
「私もなの」
かすれた声でこたえる。カルミネの腕の力が増し、クラウディアは彼の温度にうっとりと目を閉じていた。
「カルミネのこと、たくさん知りたい」
――もっとたくさんのことを。
言葉を終えるや否や、クラウディアはカルミネに抱え上げられていた。
「きゃあ――」
短い悲鳴を上げたが、それはおもてからの花火の音と同時だった。
そして破裂音が消えたときには、クラウディアの笑い声が部屋に溢れていた。カルミネも笑い、抱き上げられたクラウディアは、そのままベッドに運ばれていった。
たったそれだけのことなのに、クラウディアもカルミネも高揚し、楽しげな笑い声は切れ間がなかった。
これからなにが起こるのか、混乱と期待と不安がない交ぜになっていた。その渦中にあって胸は激しく鳴っている。
ベッドにクラウディアを横たわらせた彼は、自分の胸をはだけさせる。目を逸らして然るべきなのに、クラウディアは露出した素肌に釘づけになっていた。
彼はクラウディアの手を導き、胸元にふれさせる。すばらしい感触だった。なめらかな彼の肌に、クラウディアは強く手のひらを押しつけた。
ゆるやかな彼の呼吸と、はやく打って感じる胸の鼓動。彼の緊張と興奮を感じ取り、クラウディアはふるえた息を吐いた。
――もっと、たくさんふれていたい。
「クラウディア、きみも」
湯を使い、すでに夜着に着替えていたクラウディアは、カルミネの手で簡単にその素肌をさらしていった。
火照った肌に、部屋の空気が涼しかった。
揺れる乳房をカルミネが熱心に見つめている。とても恥ずかしいのに、クラウディアはそのことにも高揚していた。彼にはなにも隠したくない。彼のことをたくさん知りたいように、たくさんのことを彼に知ってほしかった。
「……クラウディア、きれいだ」
のしかかってきながら、彼は残っていた着衣を器用に脱ぎ捨てていく。むき出しになった胸を合わせたクラウディアは、深いため息をついていた。心地いい。もっと、と思う気持ちがクラウディアの腕を動かし、彼の身体を引き寄せていく。
合わせた素肌から伝わってくる温度に、クラウディアは夢心地になっていった。カルミネが肌をこすり合わせてきて、同時に短い笑い声を漏らす。
「あ……ぁあ……っ」
自分たちははしたないことをしている――会ったばかりの彼とその時間を共有していることに、クラウディアはくすぐったくなっていた。
彼からは、まったく酒の香りがしていなかった。クラウディアにはそれが嬉しい。押しつけられた彼の肌の熱さは、酒の力を借りた戯れではないのだ。
カルミネは熱心な様子で、クラウディアの胸元を揉みしだいている。
燭台と花火の光のなか、クラウディアは彼の端正なまなざしを見つめていた。クラウディアの肌と乳房の緩やかな曲線に食い入るような視線を送り、やがてカルミネは舌を這わせはじめた。
「ぅん……っ」
濡れた舌が柔肉をなぞる。
もう戻れない場所に踏みこんでいるのだ。蜜事に溺れながら、クラウディアに声を堪えることを覚えていった。
カルミネの舌が乳暈をなぞり、そっと吸い上げられたとき、クラウディアはくちびるを噛んでいた。かたく尖っていた赤い乳首を、彼は丹念に愛撫していく。
彼のくちびると指先で、乳房のかたちが歪められていった。
「……や、っあ……」
カルミネの前髪が肌にかかり、素肌を撫でた。彼がふれ合っていることに、身体の奥から悦びが溢れ続けている。
「……あっ……ぁう……、ん……っ」
乳首を嬲っていた舌とくちびるが、強弱をつけてクラウディアを翻弄していく。吸い上げられながら、クラウディアはカルミネから目を逸らすように天井に顔を向ける。おもての破裂音にやや遅れ、入りこんだ光がそこで踊っていた。
「ん……、んぅ……っ」
花火の美しさに目を奪われたのは一瞬で、その間にもカルミネの舌は過激になっていった。
乳房を吸い上げていたくちびるは、クラウディアの腹部に歯を立てはじめていた。彼の揺れる頭部をクラウディアは見つめる。花火の光がそこにも投じられていた。
そっとちいさくかたいものが当てられた。カルミネの歯だ、クラウディアの反応を試すように力がこめられていく。思い切り歯を立てられたら、クラウディアの柔肉など一瞬で噛み千切られてしまいそうだ。
彼の金色の髪が腹部で揺れるさまを見つめ、クラウディアはまるで自分を肉食獣に臓物を漁られる獲物のようだと思った。
彼にならそうされてもいい――なにもかもを明け渡してしまいたい。
カルミネの頭部は、さらに下腹部を下りていく。
「あぁ……っ」
クラウディアの下生えを彼の指がかき分けたと思うや、そこに舌先が差しこまれていく。
「……ぁ、あ……っ、ん、ぅあ……っ」
開いた双脚が閉じてしまわないように、彼の両手にはしっかりと力がこめられていた。
自分自身でさえ知らない秘所を、カルミネの舌が愛撫していく。かたちをなぞり丁寧に舌が動いている。秘所はそんなかたちを、とクラウディアが考えようとすると、舌先に与えられる快感ですべて流されてしまう。
「蕾が……クラウディア、こんなにかたくなってる」
彼の言葉がなにをしめしているのかわからないが、クラウディアはひときわ強い快感に息を飲んでいた。
「あ、う……っ」
カルミネの指先と舌とが秘所を散策し、クラウディアは腰をくねらせる。
「は、ぁ……あぁ……っ! あ、ぅ……っ」
彼は下生えに隠された、ただ一点だけを執拗に責め立てはじめた。
「ん、ぁん……っ、あ、やぁ……っ」
舌先が揉みほぐすように動いたそこだけでなく、クラウディアはもっと奥深い部分が強く疼くのを感じていた。そこに至る肉の道まで疼いている。
はじめて異性と肌を合わせ、閨房の知識に疎いクラウディアもわかっていた――そこに彼を受け入れるのだ。
「う……っぁ……ん……!」
舌先の刺激でクラウディアの思考は白く灼けていった。
気づけば高い声を発し、クラウディアはベッドでだらしなく四肢を投げ出していた。
ぐったりとしたクラウディアの脇腹を撫で、カルミネがのしかかってくる。
「……きみとつながりたい」
「カルミネ……私、あなたのこと」
「うん。俺も――」
彼はまだなにか言葉を続けていたようだったが、おもてからの破裂音にかき消されて聞くことはできなかった。
クラウディアは大きく左右に足を開かされた。のしかかってきた彼は、身体を――下腹部を押しつけてくる。屹立をクラウディアの中心に当て、わずかに前後に滑らせた後、彼はそれを押しこんできた。
長大なそれは、クラウディアにすれば灼熱のようだった。
「あ、ぅあ……っん……っ」
熱でクラウディアの淫肉は焼かれ、それが痛みなのかどうなのか判断がつかない。
「クラウディア……っ」
彼の腰は猛々しく動いていた。
クラウディアは内側から突き上げられ、自然と漏れ出る声をしがみついた彼の胸で押し殺していた。彼と密着したすべてが熱い。何度も名前を呼ばれるうちに、クラウディアは彼の腕に抱きすくめられていた。
「あ、や……カル、ミネ……っ」
彼を受け入れた場所がすべて熱い。
数度強く彼の腰が叩きつけられた。クラウディアの淫肉を貫いたカルミネの屹立が、何度ものたうっている。
そこで彼が精を吐いている。
クラウディアがその感覚に浸るなか、おもてからは花火を讃える歓声が聞こえてきていた。
●
翌朝クラウディアは微熱を出し、部屋から出ることを禁じられた。
風邪だろうと思うものの、屋敷には親類のちいさな子供たちも集まっている。クラウディアから誰かにうつすわけにはいかないため、それは当然の処置といえた。
ベッドで楽に過ごしながら、クラウディアは昨夜の出来事を何度も思い返している。
まだ彼の体温が――クラウディアを焼いた熱が残っているかのようだった。
カルミネと話をしたいとずっと考えていた。
その願いは叶い、昼過ぎにカルミネが客間に顔を出してくれた。
ただ、そこには兄のグイドの顔もあった。
「クラウディア、調子はどうだ? これ、食えるかな」
お菓子のお土産つきだったが、グイドの後ろに立つカルミネの姿のほうが、クラウディアにはなにより嬉しい。彼は心配そうにしていて、具合はたいして悪くないのだ、と手を取って説明したくなる。
「無理はしないでくれよな」
「寝こむほどひどくはないから」
念のため、だ。今日一日こもっていれば、おそらく明日には部屋を出ても大丈夫だろう。
「よかった、グイドと心配してたんだ」
カルミネの声を聞いただけで、クラウディアは頬が緩んでしまう。グイドがそれに気がついた様子はなかった。
「ありがとう、お昼も食べられたし、念のため部屋にこもっているだけなの」
「そりゃよかった。それじゃ俺たちは退散するから、きっちり治せよな」
「クラウディア、お大事に」
とっさに引き留める言葉が出そうになったが、クラウディアはそれをぐっと飲みこんだ。
ふたりが去り、差し入れられたお菓子をちょっとずつつまむ。
時間を潰していくなか、夕方になって客間を訪れたのは親戚のひとりだった。
「クラウディア、具合はどう?」
細面ながら意志の強そうな顔立ちのその女性は、遠縁のカムラである。
「カムラおばさま……もうすっかりいいのに、みんなおとなしくしてなさいって」
「みんな心配してるのよ、そんなに落ちこまないで」
カムラにたどり着くまでの類縁を思い浮かべようとして、クラウディアはやめておいた。限りなくカムラは他人に近い親類だ。おそらくカルミネもおなじだろう。
「今日はみんなどうしてたの?」
「人形劇を見せてくれる芸人を招待して、おちびさんたちは夢中になってたわ」
「おとなは?」
「いつもとおなじ」
そういってカムラは口元で手を動かす。グラスを煽る動きだ。うんざりした気持ち半分と、親類が変わらず過ごしていることへの安堵半分になる。
「おばさまは今度はどこにいくの?」
カムラは慈善事業として、国内外の教会や孤児院を渡り歩いている。今回のような食事会にも足繁く顔を出していた。寄付を募るなら、顔なじみの親類が一番手っ取り早い。カムラはそういってはばからない。
「しばらく家で休もうと思ってるのよ」
「なまっちゃわない? 魚でも泳ぎ続けてないと死んじゃう種類がいるんですって」
「大丈夫、家にいる間は、寄付のお願いの手紙を書きまくるから」
たぶん本当なのだろう。ペンだこのできたカムラの指に目を向けるクラウディアに、彼女は国内外の見聞について話してくれた。
ひとり客間に閉じこもるクラウディアにとって、カムラが披露してくれる話はどれも楽しいものだった。
当分は休みを、と決めたカムラは、先日まで戦争地域に滞在していたという。その土地について言葉すくなになる彼女は、ひどい光景を前にし疲弊したようだった。どんな光景か、詳細は語らない。だがそれでも慈善活動をやめるつもりはない、と語る目には強いものが宿っている。
「そういえば、兄さまもカルミネさまも従軍していたけど……」
そう切り出すと、並んで腰を下ろしていたソファからカムラは立ち上がった。窓辺に近づき、彼女はおもてを眺める。
「前線ではないでしょうから、ふたりともあまりひどい場所にはいっていないと思うわ。私の滞在したところも、両軍が兵を引いた後の……これから復興していこうっていう地域だったの」
「復興」
「とても遠いところよ。大変なことになったけど、これからきっとよくなっていくわ」
カムラの口振りは、あまりそれを信じているようには思えなかった。
クラウディアが腰を上げかけたとき、カムラは口を開いた。
「今回はカルミネさんの朗報を聞けると思ってたのに、話がなかなか出てこないわねぇ」
首をかしげたクラウディアに、カムラは明るい声で話す。
「彼のサルボレート家のまわりだと、婚約成立に沸き立ってるわよ」
「……婚約?」
「そう。カルミネさんのお相手が決まったって……食事会なんて、発表には打ってつけだし、今回その話が出ると思っていたの。でも花火見物とかに気を取られていたのかしら、なにもいわなくて……もしかしたら、まだおもてに出す気はないのかもしれないわね」
もう一度ソファに腰を下ろし、クラウディアはゆっくり息を吐いた。
「食事会の最中も、あっちこっち見て回っていたみたいよ。なかなか席にすわってなくて……男の子は興味を持つと、そっちにまっしぐらになるから」
クラウディアは頬の内側を噛み、カムラにそっとうなずく。
「お酒が入ってたせいで、グイドさんの婚約にいやな言い方をしたひともいたの」
「……兄さまの?」
「ええ。婚約が決まったんだし、こっちで遊んで帰るつもりなのか、なんて。そんなこといわれて、グイドさんも不愉快だったみたいだし、発表してないだけでカルミネさんも婚約が決まってるなら、いやな気分になっていたでしょうね」
肩越しに振り返ったカムラと目が合った。
彼女から笑みが引いていく。
「やだ……クラウディア、顔色が悪くなってるわ! 無理をさせてごめんなさい、横になって休んで」
慌てて駆け寄ってきたカムラに、クラウディアもまた慌てて首を振る。
「だ、大丈夫よ……おばさま」
昨夜カルミネとふれ合った部分に、じわりと冷たいものが広がっていた。
「いけないわ。お医者さまを呼んでもらいましょう――いやだ、真っ青じゃない」
「ね、寝てるから……横になるから、あまり大事には」
カムラに背を押され、クラウディアはベッドに身を横たえた。
体調が悪くなったらすぐにひとを呼ぶようにと厳命し、カムラはそれだけでは飽き足らず、使用人を部屋に待機するよう手配していった。
休息の邪魔にならないように、と使用人は客間のドアのあたりで待機している。
ベッドでおとなしく休みながら、クラウディアは考え続けていた。
――カルミネは決まった相手がいる。
クラウディアと過ごす間、彼はそんな素振りは見せなかった。
ひどく気持ちが落ちこんでいた。
何度かクラウディアの状態を知った親類が見舞いにやってきたが、クラウディアは使用人に頼みすべて断った。
誰にも会いたくない。
滅入った気持ちはどんどん暗いものになっていく。食事会にやってきたことも間違いで、カルミネに恋をしたのも間違いだ。胸のなかでそう断言し、すぐにそんなことはない、と打ち消す――そんなことをくり返しながら、クラウディアは上掛けに包まって静かに涙をこぼしはじめていた。
ファウスト伯父の屋敷での滞在期間は先まで予定していたが、兄のグイドの判断で、クラウディアは翌朝屋敷を発つことになった。
そんな急に、という抗議は即座に却下された。兄は途中に住む医師のもとに立ち寄るつもりのようで、クラウディアの不調を心底心配してくれている。
屋敷を発つとき、見送りに親類たちが集まっていた。
「お大事にね、きちんと治して……また来年会いましょう」
「グイド、クラウディアのことを頼んだよ」
「気をつけてね!」
いかにも宿酔いに苦しんでいる顔もあり、クラウディアは自分よりもその親類に医師を呼んでほしくなっていた。
見送りのなかにカルミネの姿もあり、なにかいいたげな――心配そうな視線をクラウディアに向けている。
彼のまなざしを一目見ただけで、ひどく胸が痛んでいた。
クラウディアは見送る親戚たちにろくに挨拶もせず、そそくさと馬車に乗りこんだ。まるでカルミネから逃げるようだと思ったが、すでに婚約の決まっている男性との一夜など、はやく忘れてしまわなければいけないことだった。
――彼にとって、遊びだった。
考えたくないことで、クラウディアは動き出した馬車のなか、ずっと目を閉じて過ごしていた。
生家に戻る前に診察してくれた医師は、疲労だろうといって安静を勧めてきた。
サルヴァン家でのクラウディアは、医師の診察を盾にし、自室のベッドで多くの時間を過ごした。不貞腐れた態度だと自分でも思うが、恋した男性に遊び相手にされたのだ、不貞腐れてもいいだろう。
気持ちを切り替えられるようになるまで二ヶ月ほどかかった。
そろそろおもてに出ていかなくては、と考えた矢先、クラウディアはひどい吐き気に見舞われていた。
――その日呼ばれた医師の診察で、クラウディアの妊娠が発覚したのだった。
(――つづきは本編で!)