「俺をあいつだと……好きな男だと思ってみればいい」
あらすじ
「俺をあいつだと……好きな男だと思ってみればいい」
営業部の王子様に片想いを続けるOLの幸。そんな彼女の恋の悩みをいつも聞いてくれるのは、幸でも緊張せずに話せる社内唯一の男友達、同期入社の悠一だった。
だが、いつまでも告白に踏み切る勇気を出せない内気な幸に、悠一は自分を練習台にしてまずは男に慣れてみることを提案する。戸惑う幸だったが悠一に強引に押し切られ、早速彼とデートをすることに……。
作品情報
作:本郷アキ
絵:カトーナオ
デザイン:RIRI Design Works
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第一章
「お疲れ様でした」
幸《ゆき》は仕事を終え、いつものように受付に挨拶をしてビルの外へと出た。
オフィスが建ち並ぶエリアの二十階建てのビル。家電量販店事業のヤザワを子会社に持つ、矢澤ホールディングスの総務部が幸の勤め先だ。
駅に向かいながら歩いて数分。高層マンションの前にある小さな公園には桜の木が植えてあり、すでに満開が過ぎたのか花弁は風に舞っていた。
今日は朝からずいぶんと暖かかった。夜はさすがに多少肌寒くはあるが、この時期としては暖かい方だろう。腕に持っていたショールを羽織り、肩まで伸びた緩くカールする髪を手櫛で整える。さて帰ろうかと足を進めたところで、背後から聞き慣れた声が届いた。
「清野《せいの》!」
声の主は振り返らずともわかる。
幸の友人であり、同期である男だ。と言っても同期の人数は軽く百人を超えるため、顔を知ってはいても言葉を交わしたのは一年ほど前が初めてだ。
「黒川《くろかわ》くん、お疲れ様、今帰り?」
小走りで追いついてきた黒川悠一《ゆういち》は、当然のように幸の隣に並び歩きだした。
美形で一八〇を超える長身の彼は入社当時から目立っていた。
艶のある黒髪は中央よりも少し右に分けられていて、襟足は短い。自然に下ろされた前髪は緩くパーマがかかっている。
くっきりとした二重まぶたに長いまつげ。彫りの深い顔立ちではあるが、彼はれっきとした日本人だ。愛想がいいタイプとは言えないからか、苦手とする女性もいるようで、彼の優しさを知っている幸としては少し歯がゆい。
(たしかに見た目は近づきがたいけど……黒川くんって優しいよね)
悠一とはひょんなことで知り合い、とてつもなく恥ずかしい現場を見られてしまったのだ。あれ以上に恥ずかしいことはそうそうない。
出会いが最悪だった故か、ミーハーに騒がれている悠一を前にしても、内気な性格が出ず普通に話せるようになった。友人となった今では、禍を転じて福となすだ。
「あぁ、残務処理だけなら、定時に帰れって」
「ノー残業デーだもんね」
つっけんどんな話し方をする悠一だが、これでいてなかなか面倒見がいい。
今だってなにも言わずに車道側に立ってくれている。彼のそういう優しさに気づいたのはいつからだろう。
「あいつも、もうすぐ帰るらしいぞ。待つか?」
「い、いいよっ! 待ち伏せとかバレバレだもん」
「バレるのがいやで、あいつにどうやって気持ちを伝えるんだか」
悠一に言われ、ぐっと押し黙る。
幸は現在、片思い中である。
相手は営業部の王子こと、桜田圭《さくらだけい》。圭もまた同期で、悠一と幸と同じ二十五歳だ。
悠一も目立つ男だが、同期内で圭を知らない人もいない。
自然に染められた艶のある茶色の髪、目鼻立ちの整っている中性的で爽やかな容姿。陰で王子と呼ばれているのを簡単に納得してしまえるほど彼は目立っていた。が、幸と接点は特になく、話したこともなかった。
幸が圭を好きになったのは、一年ほど前。
コピー機の点検に来ていた業者を営業部に案内すると、タイミング悪く営業部長がコピー機を使用中だったのだ。後ろから「あのー」と声をかけたものの気づいてもらえず、圭に助けてもらった、というなんてことはない出会い。
彼の、困っている人を放っておけない優しさに惹かれた。穏やかな話し方や、誰に対しても親切なところに好感を持った。営業部に足を運ぶ度に目で追うようになり、気づいたら恋に落ちていた。
向こうは幸の名前すら知らないだろうし、良くて顔を見たことがある程度で、同期だということもおそらく認識されてはいないだろう。
当然ライバルは多く、平々凡々な自分が彼に選ばれるとは思えない。
幸の背は百五十八センチと高くも低くもなく、体重はいつも平均ど真ん中。丸い顔と赤くなりやすい頬のせいか、年齢のわりに幼く見られがちではあるものの、良く言えば〝普通に可愛いかも〟くらいだと自分では思っている。
そんな自分が〝王子〟と呼ばれる圭に片思いなんて、無謀だとわかっているのだが。
「あのさ……私……」
幸が口を開こうとすると、被せるようにして止められる。
「ここにいたら冷えるだろ。とりあえず話はあと。飯、食うだろ?」
「うん」
幸の話が長くなりそうだと踏んだのかもしれない。軽く腕を引かれ、悠一が大通りを指差しながら尋ねてくる。
駅周辺にも飲食店が多く並んでいるが、会社近くにあるいくつかのオフィスビル内のレストランもなかなか賑わっている。
二人は、矢澤ホールディングスのビルから歩いて数分、大手都市銀行の本部が入ったビルの地下にある居酒屋へ向かった。
席に時間制限が設けられていないため、話をするにはいい場所だ。悠一と食事に来るのはこの店が多かった。矢澤ホールディングスの社員が滅多に来ないというのも、この店を選んだ理由である。
「今日は私が奢るよ。いつも相談に乗ってもらってるし」
居酒屋の暖簾をくぐる前に言うと、悠一から「はいはい」と適当な言葉が返された。
お礼にたまには食事を奢ると言っても、いつも有耶無耶にされてしまっているのだ。
女性の恋愛相談など楽しくもないだろうに、時間があえばこうして食事に付きあい、幸の話を聞いてくれているのだから、案外世話好きなのかもしれない。
カウンター席に案内され、メニューを手渡される。
「お前は? なに飲む?」
「ピーチサワー」
悠一が軽く手を上げて店員を呼んだ。ビールとピーチサワーを注文し、顎をしゃくられた。料理は適当に頼め、ということだろう。
「あと、だし巻き卵と海鮮サラダ。オムそばをください」
「唐揚げ、枝豆」
悠一はメニューを見ずに注文する。
彼は特にこだわりはないようで、テーブルに置いてある料理を食べられればいいらしい。だが毎回唐揚げは頼むため、好きなのだろう。
注文を終えて店員が去っていくと、話の続きを促すような視線が向けられ悠一が口を開く。
「で?」
「あー、うん」
腹を据えて、隣に座る悠一を見上げる。
ここ最近、考えていたことがあった。自分の決意を一番に知らせる相手は、いつも相談に乗ってくれる彼しかいない。
幸は、手を拭いていたおしぼりをぎゅっと握りながら、口を開いた。
「私ね、桜田くんに告白しようと思う」
「へぇ……なんで急に?」
先ほどまで普通に話していたはずの悠一の声が、なぜかワントーン低くなった気がする。タイミングが悪く飲み物が運ばれてきてしまい、いったん話が止まった。
彼はカウンターに置かれたビールを一気に半分ほど飲むと、やや荒っぽい手つきでジョッキを置いた。
「急、でもないと思うんだけど」
幸もピーチサワーをちびちびと口にしながら言葉を返す。
「どうせあれのせいだろ。片野由紀《かたのゆき》」
「う……なんでわかるの?」
名前の響きが同じで、名字も良く似ている女性──片野由紀は、悠一と圭と同じ営業部に所属する一歳上の女性だ。長い髪が良く似合うスレンダー美人で性格もいい。
営業事務として勤めていて、外回りの社員と違いほとんど席にいるため幸も何度か話したことがあるが、噂にたがわぬ器量をもった女性である。
そんな由紀の好きな相手がどうやら圭らしい、と噂を聞いたのは最近のこと。
噂の出所はもちろん悠一だ。
すでに告白をしているようで、一度は断ったものの圭も満更ではなさそう、というのが悠一の見解。それでもまだ付きあっていないのなら、チャンスは今しか残されていない。告白もしないまま諦めたくはなかった。
恋人になれるとまでは思わなくとも、せめて自分の存在くらいは知ってほしかったのだ。もちろん、できれば付きあいたいという願望もあるが。
「お前の考えることくらいわかる」
伸びてきた指先に額をぴんと弾かれる。痛くもなんともないが、真面目な相談を茶化されているような気がして、幸は唇を尖らせた。
「ま、清野が告白できるとは思えないけどな」
「どうして? 私だって、勇気さえ出せば……」
そう言いつつも、自分でも難しいとはわかっていた。
勇気を出せば、なんてできなかったときの言い訳にしているだけ。今まで何度も〝勇気を出せず〟話しかけられもしなかったのだから。
「桜田のこと陰からこっそり見ながら鼻血出してたくせに?」
「それは……違う! たまたまっ!」
一年近く前に起きた鼻血事件。
それが悠一と知り合ったきっかけだ。
幸はほかの階で用事を済ませ、総務部に戻る途中だった。エレベーターが総務部のある八階に止まりドアが開くと、なんと目の前に圭がいたのだ。備品の注文かなにかで来ていたのだろう。
戻ってきた自分とすれ違う形でエレベーターに乗り込んだ圭に、今度こそ「お疲れ様です」と声をかけようとしたのだ。
しかし、残念ながらそれは言葉にならなかった。
緊張のせいか、興奮のせいか。
口を開こうとした瞬間、なにかが鼻を伝う感覚がした。鼻水がと慌てて手を押し当て、目の前が羞恥で真っ赤に染まった。
閉まりかけたエレベーターから慌てたように降りてきた悠一にティッシュを手渡され、押し当てた手を見てみると、なんと血で真っ赤に染まっていたのだ。
圭に声をかけなければと必死だったのに、今度は鼻血を出している己に気づかれないよう、悠一からもらったティッシュで鼻を拭う──というなんとも情けない出会いである。
あとから悠一に聞いた話によると、鼻血は口にまで垂れていたようだ。
幸の視界に入っていなかったものの、悠一はずっと圭の隣に立っていたらしい。幸の視線と態度と鼻血で、圭への想いが一発でバレた。
ティッシュを手渡してきたのちに彼が言ったセリフが『あんた、もしかして桜田が好きなのか?』だ。
それから帰りに偶然会うこと数回、立ち話で恋愛相談に乗ってもらっているうちに、食事に行くようになり、いつの間にか友人と言える仲になった。
「なにがたまたま、だよ。営業部に来ても『お疲れ様です』も『ありがとう』も言えないくせに」
やれやれと呆れた様子で言われるのも無理はない。悠一の言うとおりだからだ。
この一年、幸ができたことと言えば、陰からこっそり見つめるくらい。せっかく同じ会社で働いているのに、好きな人に挨拶すらまともにできない。
「だって! 桜田くんが近くにいるとどうしても緊張しちゃうの。なんて声をかけていいかわからないし……」
「だから、それでどうやって告白なんかするんだって。そもそも連絡先も知らないのに、どうやってあいつを呼びだすんだ。内線か? お前、あいつに電話かけられる?」
「それは……て、手紙?」
「古風だな。渡せればいいけど」
素っ気ない話し方だが、悠一がバカにしているわけではないと知っている。解決策は幸が告白することなのだと幾度となく助言をし、面倒がらずにこうして話を聞いてくれているのだ。
幸はおしぼりをぎゅっと掴み、思案する。
悠一の言うとおりだ。
片野由紀と交際が始まる前に、どうにか告白しようと決意したものの、妙案などない。まずはどうやって圭を呼びだすかも決まっていなかった。
営業部に行くことはあっても、圭と仕事上の関わりはほぼない。容姿だけでなく仕事も完璧な圭は、書類の不備など一つもないのだ。
圭を抜かし営業成績一位をキープする悠一もそれは同じだが、彼と話すきっかけはこうして多々ある。
内線で「個人的な話があります」なんて周囲にもバレバレだ。メールという方法もあるが、会社の電話やメールを個人的な用件に使用するのはいかがなものかと思う。
営業部は総務部と違い残業が多く、帰りの時間もほとんど重ならない。
ならばノー残業デーで偶然会った際に呼びだして……と考えつつ、会っても声をかけられないから困っているのだ。
「だから相談したかったんだってば」
「だろうな。ま、見てるだけでいいなんて戯れ言より、よっぽどいいんじゃねぇの?」
「前進してると思う?」
「それはお前次第」
顔の真ん中に向けて指を差される。自分次第なのは、わかっているつもりだけれど。
(好きって言うだけなのに)
ため息をつきながら、ピーチサワーを一口含む。苦く感じるのは酒のせいではなく、悠一にいつも同じような報告しかできない申し訳なさから来ているのかもしれない。
「お前見てると、余裕ないのがわかる。がっついてるわけじゃなくても慣れてないのがバレバレだしな。今まで恋人の一人もいたことないだろ?」
悠一に話したことはないのにバレている。
好きな人はいても、自分から行動したことは一度もなく、見ているだけで相手が好きになってくれるはずもなく今に至る。
「モテる人に言われると辛い……」
「話しかけられて焦らない程度に男に慣れておけよ。そういうの面倒だと思う男もいるからな」
「慣れるって言ったって」
男性に慣れるための練習。そんなのどうやってすればいいのか。困惑が表情に出ていたのか、向かい側から嘆息が聞こえる。
「仕方ないから俺が練習台になってやる。片野とはまだくっつきそうにないし、それくらいの時間はあるだろ。まずは、桜田の前に出たときに鼻血出さないようにしなきゃな。あとは手紙でもなんでもいいから、本人を前にして喋れるようになれよ」
「もう言わないでってば! あ、でも私……男の人でも、黒川くんとは普通に話せるよ?」
練習台と言っても、悠一が相手では練習にならないだろう。
好きな人を前にすると緊張してしまうだけで、内気な性格ではあるがほかの男性社員とも仕事なら普通に話はできるのだ。
悠一が相手ならば緊張すらしない。一緒にいて緊張する相手に恋愛相談などできるはずもない。
「それはお前が俺を〝男〟だと思ってないからだろ?」
「お、男!?」
当然だ。悠一をそういう目で見たことは一度もない。男性であるとわかってはいても、彼の前では恥もてらいもなく接せられる。おそらく出会いが強烈過ぎたせいだろう。
「俺をあいつだと……好きな男だと思ってみればいい」
「無理だよ、そんなの」
幸がきっぱり言い切ると、隣にいる悠一の口からため息が漏れた。一瞬、傷ついた表情に見えたのは気のせいだろうか。
だって、悠一は悠一で、圭の代わりにはならない。あいつだと思えと言われたところで、意識が変わるはずもなかった。
「じゃあ、今のまま告白できるのか? それともほかにいい考えが?」
ぐうの音も出ない。
答えが返ってこないとわかっていたのか、悠一はさっさと話題を変えてくる。
「なぁ、もし桜田と付きあったら、なにをしたい?」
悠一はカウンターに肘を突いて、なにかに挑むような眼差しを向けてくる。
「なにをしたい……?」
「なんでもいいよ、言ってみろ」
鼻血を噴きだしたところを見られていても、圭への想いを知られていても。それを言葉にするのは恥ずかしかった。
(なにをしたいか……なんて)
経験がないため幸の想像は貧困だ。そう聞かれても、世の中の恋人たちがどうやって付きあっているのかなどわかるはずもなく。
ふと思いついたのは、一つだけ。
「手……」
悠一を見ないまま、ぽつりとこぼす。
「手?」
「繋ぎたい……」
幸が言うと、目の前の悠一が今にも笑いだしそうな顔をする。自分でもわかっている。二十五歳にもなって〝手を繋ぎたい〟なんて中学生のカップルのようだと。
(でも……好きな人と手を繋いだことがないんだから……仕方ないじゃない)
高校、大学時代、何人かに告白されたことはある。だが、誰とも恋人関係にまでは至らなかった。
良くある〝とりあえず付きあってみる〟が幸にはできなかった。
友人に「付きあってるうちに好きになるかもしれないよ」と言われたが、結果、好きにはなれなかったのだ。
手を繋ぎたいと言われて、いやだと断ったこともある。なんとなく、その人に触れたいとは思えなかったから。
結果、手繋ぎデートすら未経験のままこの歳になってしまった。
「だから言いたくなかったのに。笑わないで」
「悪かったって。映画に行きたいとか、食事に行きたいとか返ってくると思ったんだよ」
もしかして彼が尋ねたのはそういうことだったのだろうか。なにをしたいかと聞かれたから手を繋ぎたいと言っただけなのに。
恥ずかしさに顔が熱く火照ってくるが、悠一の前では今さらだ。
「じゃあ、俺が手繋ぎデートしてやる」
「なんで黒川くんと?」
幸がきょとんとした目で隣を見ると、なぜわからないのかという顔をされる。
「だから練習台になってやるって言っただろうが。心配するな、ちゃんと俺を男として意識させてやるよ。俺が相手で不満なのはわかるけどな」
「違うよ、不満とかじゃなくてさ。いくら友達でもそこまで頼むのは悪いよ。私のことなのに。それに彼女とかいるでしょ?」
悠一に不満などあるはずがない。彼が善意から言ってくれているのも、幸の恋を応援してくれているのも知っている。
そこまで迷惑をかけられないと首を横に振ると、悠一は安心したような笑みを浮かべる。
「いたらこんな提案するかよ。いいんだよ、俺の問題でもあるから」
「どういうこと? 俺の問題って」
奥歯に物が挟まったような言い方に首を傾げる。
「お前が困ってると、こうやっていつまでも恋愛相談に付きあう羽目になるってこと。もっと楽しい話したいだろ? さっさとケリつけろよ」
「う……それは、いつもすみません」
「期間は、お前が告白するまで」
「告白って、メッセージとかでも?」
「できるならな。さっきから言ってっけど、お前、桜田の連絡先知らないだろっての。それに、どうせ告白するなら対面でしろよ。好きだって直接言われて、嬉しくないはずないだろ?」
乾杯をするようにジョッキをグラスにぶつけられて、さすがに反省する。悠一は口に出さなかったが、おそらく片野由紀はそうしたというのだろう。
圭の連絡先を知っていたとしても、自分がメッセージを送れるとは思えなかった。ただ対面で告白はさらにハードルが高い。
告白をすると決意したのに、すでにくじけそうである。
「じゃあ、今週土曜日にデートな。ちゃんと空けておけよ?」
「う、うん……わかった。お願いします」
悠一の手が伸びてきて、幸の前に置かれた皿から唐揚げをいくつか皿に取る。なんとなく彼の骨張った手に目を留めてしまったのは、手繋ぎデートだなんて言われたからだろうか。良くわからない感情を流し、幸も唐揚げを摘まんだ。
(――つづきは本編で!)