氷の王子様をうっかり押し倒したらまさかの求婚が待っていました!!

「い、いやだ……ッ。何で俺が、こんな情けない姿……ッ!」

あらすじ

「い、いやだ……ッ。何で俺が、こんな情けない姿……ッ!」

 酒場の給仕娘エイプリルは、食うに困らない生活を夢見てお城勤めのメイドの職に応募する。
 しかし見習い初日、エイプリルは冷酷と評判の第一王子ライナスの下半身にお茶を零す大失態を犯す。
 エイプリルが慌てて拭っていると、見る見るうちに反応してしまう王子の下半身。恥ずかしさに取り乱す王子をどうにか取りなそうと、エイプリルは意を決して彼を押し倒し……!

作品情報

作:小達出みかん
絵:紺子ゆきめ

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 1章 私、転職します!

『お城の見習いメイド募集!』
 色とりどりの花が咲き、賑やかな露店がたち並ぶ城下の広場。その中央に建つ柱に、たったいま貼り紙がされた。
 なんだなんだと集まる人たちに混ざって、酒場の給仕娘エイプリルもその貼り紙をじいっと見ていた。
 お世辞にも、お城のメイドが似合いそうには見えない娘だ。頭の後ろでぎゅっとまとめられた紅茶色の癖っ毛はぱさついていて、身に着けたエプロンドレスは色あせている。その上長い事立ち働いてきた手指は荒れている。しかし。
(住み込み三食付き、週休二日、他手当あり!?)
 貼り紙の語句を追う緑色の目は爛々と輝いていた。
 けれど、ずっと立ち止まって見ているわけにもいかない。
 人だかりを離れ、職場である酒場『仔馬亭』に向かいながらエイプリルは筋肉痛の腕をさすって首をすくめた。
(昨日重いジョッキをいっぱい運んだせいで、まだ痛い!)
 酒場の客は、基本タチが悪い。小柄なエイプリルがどれだけジョッキを運べるかと、悪ふざけでいくつも注文されたのだ。
 長い事酒場で働くエイプリルだったので、こんな客たちのあしらいは慣れている。逆に愛想よく運んでみせて、チップをたんまり弾んでもらった。
(でもあれっぽっちじゃ割りに合わないや。まだ痛いもん。今日は無茶はよして大人しく仕事しよ……)
 はぁとため息をついて、エイプリルは路地裏を進んでいく。
(私、いつまでこんな仕事しなきゃいけないのかな……でも他にできることもないし、生活するためにはお金が要るし……)
体調が悪い日の仕事はじめは、誰だって憂鬱な気分になるものだ。先ほど見た貼り紙が、エイプリルの頭の中でちらつく。
(お城のメイドかぁ……いいな)
 お城なら、拳や怒号が飛び交うこともないし、タチの悪い酔客もいない。なにより安定してお給料がもらえる。
(週休二日……他手当……)
 福利厚生もバッチリだ。その上特に資格は要らないと書いてあった。
(メイドの仕事って……お掃除とか、お料理を運んだりするやつだよね?)
 それなら、この自分にだってできるんじゃないだろうか。そんな気持ちがむくむくと胸の中で広がっていく。 
 気が付いた時には、エイプリルの足はもときた道を戻っていた。

「エイプリル・ベイリー、年は十八歳?」
 立派なオーク材の机の向こう側。灰色の髪を撫でつけ、三つ揃えをビシッと着こなした壮年男性がエイプリルに聞いた。
「はい、長い事酒……えっと、ウエイトレスをしていました」
「ウエイトレス。なるほど。志望動機は?」
 眼鏡の奥がキラリと光る。大事な質問だろう。エイプリルは緊張しながらも、正直に答えた。
「お城で働いてみたいなと思いまして。私のような者はお呼びでないかもしれませんが、せっかく貼り紙を見ましたし、チャンスに賭けてみようかなと」
「ふむ」
 膝の上で組み合わされたエイプリルの荒れた手をじっと見ながら、ロマンスグレーの壮年男性は軽くうなずいた。
 その視線に、エイプリルの身はすくんだ。こんな手では、お城のメイドなどつとまるはずがない。せめて手袋でもしてくればよかった。そんな後悔が頭に浮かぶ。
「なるほど、わかりました。採用です」
「そうですか……って、え!?」
 落ち込みかけていたエイプリルは、はっと顔を上げた。
「荷物をまとめて、明日またここに来てください。見習い期間は住み込みで働いてもらいます。その後正式採用が決まったら、通勤が許可できるようになります」
 信じられない思いで、エイプリルは頭を下げた。
「ありがとうございますっ!」

 かくしてエイプリルは、お城の見習いメイドとなった。シンプルな、けれど上等な仕立ての黒いドレスに、白い布がたっぷりと使われたエプロン。それに髪を留めるヘッドドレス。
 孤児として育ち下町で生き抜いてきたエイプリルは、こんな立派な服を着るのは初めてだった。お仕着せの制服で大喜びするエイプリルに、年配の先輩メイドたちは笑い半分でアドバイスしてくれた。
「靴下だけは支給されないから、自前なのよ。それと、靴下留め《ガーター》は持ってる?」
「持ってないです……!」
「今度あげるわ。私のおさがりで悪いけど……あらあら、若いのにあかぎれがすごいわね。手荒れには、油をちょっとぬって手袋をして寝るといいわよ」
 その一つ一つをありがたく受け取り、エイプリルは言いつけられた仕事を覚えようと必死に頭と身体を動かした。昼下がりの休憩時間になるころには、へとへとに疲れていた。厨房と隣り合った半地下の休憩室でお茶を飲み、ふぅと息をつく。
(ええっと、まず、私たちは廊下の端を歩く。王族の方々とすれ違ったら目礼。使った掃除用具は地下の箱に戻す……それに、靴下ははきっぱなしじゃダメ。靴下留めでとめて、きっちり履かないといけない)
 あれこれ決まり事を思い返すエイプリルの肩に、その時ポンと手が置かれた。
「わ?!」
 驚いて振り向くと、そこには気のよさそうな大柄の青年が立っていた。
「あ、ごめんね。君、今日から入った子だろう?」
「はい、そうです」
「俺は厨房の者なんだけど……ちょうど手が空いてるメイドを探してて」
 休憩中だったが、エイプリルはかまわず立ち上がった。
「わかりました、何をすればいいでしょう?」
「これからライナス様のお茶の時間でね。俺たちコックはこの通り、上には出れないから、君に運んでほしいんだ。」
 彼は自分の汚れたコック服を指さして説明した。要は給仕だ。簡単な仕事にほっとしつつ、エイプリルは笑顔でそれを引き受けた。すると彼はちょっと眩しそうな顔をした後、はにかんだように笑った。
「俺、サム。君の名前は?」
「エイプリルって言います、よろしくお願いします」
 元気に名乗った後、エイプリルはお茶のトレイを持って厨房を出発した。
(ええと、王子のライナス様の、午後のお茶……)
 王子の部屋は、二階の西翼の角だと聞いていた。銀製のポットと菓子皿が乗ったトレイは結構重い。そろりそろりと向かいながら、エイプリルは少し緊張してきた。酒場で働いている時から、彼の噂は耳にしていた。
(『氷の王子』ライナス様……笑った顔を誰も見た事がないって噂……だよね。先輩メイドさんたちも、気難しい人だって言ってたような)
 ぼろを出して不興を買う前にさっとお茶を出して、ぱっと去ろう。そう思いながらエイプリルは王子の部屋の扉をノックした。
「失礼します、お茶の時間です」
「入れ」
 中から声が返ってきたので、エイプリルはずっしりとした扉をなんとか片手で開け、しずしずと中へと踏み込んだ。
 ちらりと声の主の様子を伺うと、ライナスはエイプリルには見向きもせず、机に向かって書類を見つめていた。
 集中するその横顔は、まるで張り詰めた弓弦のようだった。一筋の乱れもなく片側に流された、明るい金髪。ツンと形良く尖った鼻に、細い顎。そのアイスブルーの目は、瞬きすら惜しむように、じっと手元の書類に落とされている。
(うわぁ……本当に『王子様』ってかんじ……。いや、そりゃ王子様なんだけどさ)
 内心見とれながらも、エイプリルは重たいトレイを机の上に置こうとした。が、いろんなものが広がっていて、置けるスペースがない。
「すみません、こちらの書類、少し動かさせていただきますね」
 エイプリルがおずおずと書類に手をかけたその時、ライナスがはっとエイプリルを止めた。
「待て、勝手に……」
 ライナスがエイプリルの手を掴んだ。そのせいで、エイプリルはバランスを崩して前のめりになった。
(やっば―――!)
 エイプリルは長年の動作で、身体を立て直そうと力を入れた。しかし銀のポットは重かった。その上腕の筋肉痛がまだ治りかけなのも、痛かった。
「……っく!」
 腹の底から力を出し、エイプリルはなんとか踏みとどまり、重たいトレイを落とさず支え切った。しかし……
「あっ……!!」 
 トレイの上の本命、銀のポットは無事だった。しかし、シロップの入ったミルクピッチャーがトレイから飛び出し、あろうことかライナスの膝の上に着地を遂げていた。
「あわわ、ごめんなさい……っ!」
 エイプリルは慌ててトレイを置いて、ピッチャーをライナスの膝の上から回収した。メイプルシロップは見事にすべてライナスの下半身に広がっていた。
「お、お怪我は!?」
「怪我したように見えるか?」
 ライナスは眉根を寄せて冷たく言った。
(うわ、やばいやばいやばい!) 
 まさか初日に、こんなミスをやらかしてしまうとは。エイプリルの背筋がすーっと寒くなる。
(せ、せっかく見習い採用されたのに、ここでクビなんて嫌だよ……!)
 とろりとしたシロップは、どんどん服に沁み込んでいく。どうにかせねばと思ったエイプリルは、腰かけるライナスの前にひざまずき、とっさにハンカチを取り出してそれを拭った。
「すみません! 今綺麗にいたしますから……!」
「なっ……!」
 エイプリルが触れた瞬間、ライナスは身を固くした。
「や、やめ……ッ」
「すみません! 早く拭かないと、シミになってしまうので……!」
 なけなしのハンカチだったが、そんな事は些細な問題だ。エイプリルはメイプルシロップをハンカチに吸い取らせるようにきゅっと押さえつけた後、ごしごし拭った。
「うっ、あ、手を、どけ……ッく……!」
 ライナスが声を詰まらせた。妙な声だ。そこでエイプリルは、はっと気がついた。
 ――自分が擦りまくっていたのが、王子の股間だと言う事に。
(や、やば………ッ!?)
 とにかく目の前のシミを消さねばという気持ちで、恐れ多くも王子様のプライベートゾーンを蹂躙してしまっていたのだ。
 しかも――エイプリルのせいで、その場所はズボンの上からでもはっきりとわかるほど反応してしまっていた。エイプリルは脱兎の速さでそこから手を引いた。
「あ、あわわわわわ……ごごごごめんなさ……」
 両手を震えさせながら後ずさるエイプリルだったが、ライナスはそれ以上に震えていた。
「くっ……こ、この……ッ」
 先ほどまでのクールな表情とはうってかわって、その顔は耳まで真っ赤になり、蒼い目はギリギリとエイプリルを睨みつけていた。その身体も、拳も、小刻みに震えている。
(まずい、怒ってらっしゃる!!)
 いきなり粗相をされた上に、こんな無礼を働かれて、そりゃあそうだろう。エイプリルはパニックになりそうになる胸中を抑えて、ただぺこぺこ頭を下げた。
「触ってごめんなさい! し、シミ抜きに必死で……!」
 しかしライナスはエイプリルを睨みつけているままだった。
「この、俺に……よくもッ……」
 その目は怒りと屈辱に燃えていた。エイプリルは震えあがった。
(どうしよう! クビどころじゃ済まないかも……ッ!)
 王子に無礼を働いたと言う事で、何か罰を受けさせられるかもしれない。どうにかして彼に怒りをおさめてもらわなくてはいけない。エイプリルは必死に思い出した。お客を逆上させてしまった時、酒場ではどうしていたか――。
(えっと、さ、サービス! 何かをタダにするとか! それから笑顔、笑顔で接客……ッ)
 とはいっても、今のエイプリルになにもタダにできるものなどない。ふと、酒場のおかみの気だるげなアドバイスが脳裏によみがえった。
『男の怒りを鎮めるなんてカンタンよ、まず食欲、それが駄目なら性欲発散させればい~の。覚えときなさい』
 そうだ、性欲。今王子の下半身を目覚めさせてしまったのは、エイプリルのミスだ。
 それでライナスが怒っているのなら、責任を取って自分が発散させるのが筋なのではなかろうか――。焦るエイプリルの頭の中で、そんなめちゃくちゃな結論が導き出された。
「す、すみませんライナス様! 私が責任とりますので、どうか落ち着かれてくださいッ!」
 エイプリルは窮鼠猫を噛む勢いでライナスに詰め寄った。
「こちらのお召し物、お洗濯に持っていきますので、脱がさせていただきますね……!」
「ちょっ……やめ、ッ!?」
 ベルトのバックルを解くと、上等な絹のズボンの前は簡単に開いた。下着越しのその場所に、エイプリルは手を添えた。
「何を――っう……!」
 ライナスは抗議しようと口を開きかけたが、その瞬間その身体に力が入った。
「ごめんなさい――、私がライナス様のここを、その、お鎮めしますので……!」
 失礼します! と声をかけて、エイプリルは下着をめくった。ぶるんとライナスのそれが顔を出す。初めて触った男性のその場所は、硬く熱く、エイプリルの手の中でどくん、どくんと脈打っているかのようだった。
(すごい、心臓みたい……)
 大事に扱わなくては。実体験はなかったが、前の職場環境のおかげでソッチ方面の知識だけはある。エイプリルはおかみや酔客たちの言っていた事を思い出しながら、手を上下に動かした。
「やめっ、何を――くぁ、ぁッ……!」
 抵抗しながらも、びくん、とライナスの腰が震える。エイプリルが手を動かすたびに、その言葉は途切れて、口から吐息が漏れた。
「あっ……くぅ、う……ぁ」
 とろり、とその先端から透明な液体が沁みだしていた。エイプリルの手にもそれは滴り、くちゅりといやらしい音を立てる。抵抗一色だったライナスの口元はゆるみ、その目は熱っぽく潤んで細められていた。 
(うわぁ……なんかエッチだ……)
 おもわず見上げてしまったエイプリルの目と、潤んだアイスブルーの目がぶつかる。するとライナスの目はまたたくまにぎゅっと閉じられた。
「く、ぅっ……見るなッ」
「ご……ごごごごめんなさい!」
 エイプリルは謝りながら手の動きを再開した。しかしライナスはごまかされてはくれなかった。
「お、お前も、脱げっ」
「えっ」
「なんで……俺だけっ、丸出しにされて、見られて……ッ」
 たしかに、それはそうかもしれない。とにかく怒りを鎮めて欲しいエイプリルは、さっとエプロンを解いた。
「わ、わかりましたっ」
 するとライナスは、命令したくせに驚いたように目を見開いた。
「お、おい、いいのか!?」
「責任取るって、言ったので……!」
 首元と手首まで詰まった飾り気のないドレスを、エイプリルは潔く足元まで下ろした。酒場労働で余分な蓄えが一切ない、細い裸体が露わになる。お粗末な下着とも合わせて、二重に情けなかった。
「すみません、貧相な体で……」
 しかしライナスは、食い入るようにエイプリルの肌を見つめていた。思わずと言ったようにその手が伸びて、エイプリルの手首をつかんだ。
「わっ」
 座るライナスの上に、エイプリルが倒れ込み、むぎゅっとなけなしの胸が彼の胸板に押し付けられた。
 下着越しに、彼の心臓が大きく鼓動を打っているのがわかる。手首をつかむ彼の指が、むずむずと動く。ちょうどエイプリルのお腹にあたる彼のものが、びくんと震えたのがわかった。
(そうだ、鎮めないと、怒りも鎮まらない――!)
 自分の役目を思い出したエイプリルは、再びそこに手をかけた。
「うっ――あ、やめ……ッ」
 しかしライナスは、がしっとエイプリルの両手をつかんでそれを阻止した。
「わ、ライナス様……っ、離して、いただけませんか……ッ」
 しかしライナスは、上目遣いで上にいるエイプリルを睨んだ。
「い、いやだ……ッ。何で俺が、こんな、情けない姿……ッ」
 そういわれて、エイプリルは焦った。
(わ、私も脱いだからあいこ――とは、ならないって事!?)
 手で扱いて、下着姿にもなった。けれどまだライナスは怒っている。
 これ以上何かを差し出すとすれば――。エイプリルはぎゅっと目をつぶった。
(酒場で口説かれても、迫られても、守りぬいてきた貞操――!)
 酒場娘にしては、エイプリルは純潔をそれなりに大事にしてきた。しかし、ここで出し惜しみしてのっぴきならない事態になるのは惜しすぎる。
(こ……ここまでしたんだから、もう最後までしたって同じだッ)
 下町娘の純情など、犬も食わない! エイプリルは自分にそう言い聞かせて、するりと自分のパンツを下げた。
「わ、わかりましたっ。私の初めて、ライナス様に捧げます……ッ」
 ためらいを捨て、エイプリルは一気に彼の上に腰を沈めた。何も通した事のない狭い入り口に、ぐぐっ、とライナスのものが侵入してくる。
「―――っつ!」
 さすがに、楽にはいかない。エイプリルはいったん動きを止めた。
「っあ、く……だ、大丈夫、か」
 ライナスの方が、よほど苦し気にそう聞いてきた。エイプリルは無理やり笑顔を浮かべ、お尻をさらに沈めた。
「は、はい――大丈夫、です……っ」
 隘路を押し開くように、彼のものが入ってくる。その圧迫感を我慢しながら、エイプリルは根性で腰を下ろしきった。
「はぁ、はぁ……っ」
 ここからさらに、上下に動かなくてはいけないのか。エイプリルは気が遠くなりそうになるのを押し留めながら、再び腰を上げようと力を入れた。しかし。
「ま……待て……っ、ちょっと待てっ……」
「なんです……っ?」
「今、動くな……ッ」
 歯を食いしばりながら、彼は途切れ途切れにそう命令した。苦し気なその様子に、エイプリルは不安になった。
「だいじょうぶ、ですか? どこか……痛いですか?」
 すると彼はきっとエイプリルを見上げた。
「い――痛いのは、お前の方だろう……っ!」
 もしかして、心配してくれているのだろうか。そう思ったエイプリルはへにゃりと笑った。
「だ、大丈夫ですよぉ。ライナス様が、痛くなければそれで……」
「なんで、こんな事ッ……」
「ライナス様に粗相をしてしまったので……あの、もう動いてよろしいですか?」
 しかし彼は首を横に振って、ぐいっとエイプリルの腰を抱いて持ち上げ、そのまま机の上に横たえた。机の上にいっぱいに広げられた書類が、エイプリルの背中にふれてかさっと音を立てた。
「ダメだっ、こんな事……ッ! 抜くからな……っ」
 ずぷん、と彼のものが引き抜かれた。体液がお互いのからだをつうっと繋いでいた。
「あっ……ライナス様……」
 圧迫感は消えたが、引き抜かれるとぽっかりと空洞ができたような感覚があった。それに。
(だ、ダメだよ……! ここでやめたら、私のミスが……!)
 エイプリルは身体を引こうとするライナスの手を掴んだ。
「ま、待って、下さい……! 私とするのは、嫌、でしたか……?」
 横たわったまま、エイプリルは必死にライナスの目を見上げた。
 机の上に横たわって、裸で犬みたいにお腹を見せて乞うている。
 ――想像しなくても、ひどい恰好だとわかる。
 しかしエイプリルは必死だった。そんな姿を見下ろして、ライナスは固まっていた。ごくんとその喉が上下する。
「嫌……とかでは……なく……」
 その目は迷うように、エイプリルの顔や体をいったりきたりしていた。
「嫌じゃないなら……もういっかい、入れて、くれませんか?」
「お……お前は、嫌じゃ、ないのか」
 エイプリルは首を横に振った。もう一回入れてもらうためには、少しイロをつけて何か言った方がいい気がする。
「い、いいえ! 嫌じゃ、ないです……その、ライナス様、なら」
 できれば外出ししてくれると嬉しいんですけど……と付け加えたエイプリルに、しばしの沈黙の後――ライナスはうなずいた。
「わ、わかった……」
 ほっとしたエイプリルは、笑顔で足を開いた。
「よかったぁ……来てください、ライナス様……」
 見下ろすライナスの顔が、ぐっと何かをこらえるように歪む。
「っ、入れる、ぞ……ッ」
 彼のものが、再びエイプリルの中へと挿入《はい》ってくる。さきほどとは違い、慎重な動きでそれは進んできた。
「っ……ぁ、」
 自分でするのと違う、その優しい動きに、先ほどとは違う感覚がエイプリルの下腹に芽生えた。
 圧迫感だけではない。内側から疼くような、熱が。
「っく……平気、か」
「はい、ライナス、様……っ」
 答えたその時、彼のものが全て入り、奥まで到達した。
「あっ……あ、んうぅっ」
 こつん、と奥の壁を突かれると、未知の痺れがエイプリルの身体に走った。机に突かれたライナスの腕を、エイプリルは思わずぎゅっと握った。
「ど、どうした……っ」
 ぐっ、と再び突きながら、ライナスが聞いた。熱に浮かされたエイプリルの口から、正直な感想が漏れ出た。
「あ、あ……っ、きも、ちい、です、これ……っ」
 ライナスの目が見開かれた後、ぎゅっと細められた。その口から、絞り出すように声が出る。
「っ……ぅ、お、俺もだ……ッ」
 彼のものが、エイプリルの最奥を押しつぶした。じわ、じわ、と沸いていた熱が、その刺激をさかいに一気に膨れ上がる。

(――つづきは本編で!)

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