作品情報

愛おしい人を、ただ幸せにするために~一途な騎士は無垢なる王女を夜毎快楽で染め上げる~

「お前をおいては逝かない。俺が死ぬ前に、お前を殺して連れていってやる」

あらすじ

「お前をおいては逝かない。俺が死ぬ前に、お前を殺して連れていってやる」

成人の誕生日、王女マルーンは密かに想い合う騎士レヴェッシュと身体を重ね、快楽の中で夫婦の誓いを交わした。けれどその翌朝から、彼は忽然と姿を消す。――彼女は知らなかった。自分が王太子の兄の政敵であり、側妃の母と祖父に操られていることを。そして七年後、彼女は隣国への遊学中に人攫いに遭い、馬車でどこかへ連れ去られていた。『自分は祖国から愛されている』……そう信じていた世界が、崩れてゆく中。傍に寄り添ったのは、男のように凛とした一人の侍女。――名は“レヴ”。その瞳はかつて彼女を貫いた、熱く、激しく、狂おしい恋人と同じ色をしていた。

作品情報

作:水田歩
絵:史歩

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6/13(金)ピッコマ様にて先行配信開始!(一部ストア様にて予約受付中!)

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プロローグ~夢の中の逢瀬~

 今でも夢に見る。人生で一番幸せな日のことを。
 ——七年前、十六歳の誕生日当日。セイライアの王宮の一室で、わたくしは朝の一点鐘が鳴る前から身支度に追われていた。
 大陸では、日輪が動く時間に合わせて、およそ二刻ごとに鐘が鳴る。住まう人々に時間を知らせるためだ。朝に二回、夕に二回ずつで、それぞれ『朝の一点鐘』『朝の二点鐘』などと呼ばれている。対して、あいだに鳴る昼の鐘は一回のみ。
 髪を結いあげられ、化粧を施された。最も格式のある衣装を身に着けた頃、夕の一点鐘が鳴った。
 今日はわたくしの誕生日を祝う舞踏会が執り行われる。この年齢が特に重要で、大陸では結婚が許される年齢だ。
「レヴェッシュ。わたくし、十六歳になってしまってよ?」
 恋しい人の名前をこっそり呟いてみた。しかし、会ではレヴェッシュに逢えないだろうとわかっている。彼はわたくしのお兄様であられる、第一王子殿下付きだ。お兄様は病弱で宮に篭っていらっしゃるから、側近が傍を離れるわけがない。
 だからと言って、わたくしが舞踏会に出ないことは許されない。わたくしは周囲に悟られぬよう、そっとため息を吐き出した。
 でも、いいの。
『マルーン、舞踏会の日なんだけど。慣例で女性王族は早めに退出するだろう? 疲れたと言って早めに寝たフリをしてくれないか? そのあと、出てこれるかな。いつもの場所で待っている』
 レヴェッシュがこの前、逢ったときに囁いてくれたからだ。
 女官に声をかけられる。
「王女殿下。お出になられる時刻にございます」
「わかったわ」
 わたくしは女官や騎士に守られて舞踏会が行われる広間へ移動する。
 十六歳の、記念すべき初めてのダンスは父王陛下に最初の相手を務めていただく。次はお祖父様である侯爵だ。そのあとは結婚相手と目される貴族や嗣子《しし》達とたくさん踊った。……でも、本当に踊りたいのはただ一人。
「マルーン殿下もいよいよ成人王族の仲間入りですな!」
「それにしても、姫のなんとお美しいことか! 艶やかな黒髪に宝石のような紫の瞳! 絵師どもがこぞって描きたがるのがわかりますな!」
 賞賛のお返しとして艶やかに微笑みつつ、わたくしは気もそぞろだった。
 ……夕の二点鐘が鳴り終わった。華やかだけれど退屈な舞踏会を乗り切って、わたくしは会を辞す。
 この日のために仕立てられた衣を脱がされるとき、レヴェッシュに見てもらいたかったな、と残念に思う。
 湯から上がって夜着を纏うと、わたくしは控えの間にいた者達も下がらせた。早々に寝室に引き篭もる。もちろん『疲れたので、朝まで起こさぬように』と命じておくのを忘れない。
 気配がすっかりなくなると、わたくしは弾んだ足取りで庭へ出た。秘密の通路を抜けて、想い人が待つ場所へと向かう。最後のほうには早足が駆け足になった。
 わたくしが来たのを察したのだろう、豹に乗ったレヴェッシュが木陰から出てきた。フードを外したので、彼の顔が見える。わたくしの大好きな彼の金茶色の巻き毛や翠色の瞳は、月輪の光を浴びて銀髪や蒼瞳に変わってしまったようだ。
 彼はわたくしを見て破顔してくれ、豹から降りると両腕を広げてくれていた。
「レヴェッシュ!」
「マルーン」
 最後の一歩は彼に向かっての飛翔となった。レヴェッシュがしっかりと受け止めてくれる。
「誕生日おめでとう。レオパルもお祝いしている」
 レヴェッシュが言えば、彼に寄り添っていた豹がわたくしに頭を擦り寄せてきた。
「ありがとう」
 わたくし達は互いを抱きしめあう。彼は改めてわたくしを見つめると、意を決したように告げた。
「マルーン。僕は君が好きだ」
 嬉しい。初めて、彼に言ってもらえた。今まで、わたくしばかり想いの丈を伝えていたけれど……、ようやく受け入れてくれたのだ。幸せな気持ちで微笑むと、彼も眩しそうな表情をしてくれる。
「レヴェッシュ、わたくしも大好き」
 見つめあううち、互いの顔が近づく。まつげが触れ合って、初めての口付けを交わした。
「君が欲しい」
「わたくしも」
 肌を重ねるのは自然の成り行きだった。レヴェッシュは纏っていた長覆衣《マント》を地面に敷いた。彼の手がおそるおそる、わたくしを横たえていく。少しでも美しく見えるといいなと思いながらレヴェッシュを見上げる。
 ゴクリ、と彼の喉が鳴るのが聞こえた。
「綺麗だ」
 掠れた声で言ってくれた。
「誰に言われたときよりも、レヴェッシュに褒めてもらうのが誇らしいわ」
 囁き返せば、レヴェッシュがのしかかってきた。
 わたくし達の唇は再び重なり、離れては触れ合う。やがて、彼の舌がわたくしの唇を割った。わたくしがうっすらと開けていた歯の隙間から、彼の舌が口腔内に入りこんでくる。わたくしの舌を見つけたレヴェッシュはちゅううと吸った。
「ん……」
 わたくしが声を出すと痛かった? とばかりに舌を舐めてくれる。ううん、という意味で、わたくしは頭《かぶり》を振る。
「ふぅん」
 気持ちよくて、鼻にかかったような甘い息が漏れでると、レヴェッシュは少しずつ大胆になった。
 互いの舌がからみあい、彼の手がわたくしの胸や体の線、お尻をまさぐる。わたくしも彼の体に手を伸ばす。レヴェッシュと、余すところなく触れあいたかった。
「声を抑えていて」
 レヴェッシュに頼まれ、わたくしは両手で口を押さえる。彼はわたくしの夜着の紐を緩めると、大きく襟元を広げた。再び、ゴクリと彼の喉が動く音が聞こえてくる。
「綺麗だ」
 もう一度囁きながら、じかに彼の手が触れてくる。そ、と壊れ物に触れるような優しい手。大事にされていると感じる。わたくしは嬉しくなった。けれど、恥ずかしい。わたくしは、今まで侍女にしか肌を見せたことがなかった。
「柔らかい……大きいね」
 喉に絡んだ声でそんなことを呟かれる。
 わたくしの年齢に似つかわしくないたわわな胸は、いつも男性から怖気立つような視線で舐めまわされる。
 けれどレヴェッシュが気に入ってくれるなら、大きくて柔らかくてよかった。揉み込まれているうちに、彼の手のどこかが敏感な所に触れた。つい、声が出てしまう。
「ぁ」
「ここ?」
 レヴェッシュが優しく胸の尖りをつまむ。
「ぅん」
 いささか強く摘まれて、痛くて体を引いてしまった。
「ごめんね」
 痛かったほうの尖りに口付けを落としてくれ、そのまま舌で舐られた。
「あ、ん」
 わたくしは、すぐに痛みを忘れて喘ぐ。
「マルーン、教えて。どのくらいの強さなら痛くない?」
 乳首を含みながら話しかけられた。彼の熱い息と不規則な舌の動きが、あまりに気持ち良くて声をあげそうになる。
「これくらい?」
 もう片方の色づいた先端を、二本の指の腹を使って柔らかく摘まれる。わたくしは、しっかりと口を手で塞ぎ直しながら、一生懸命コクコクと頷く。
 口と指で胸を可愛がられているうちに、わたくしの脚の間はしとどに濡れてきた。秘密の谷間の裂け目が、ヒクヒクと呼吸しているかのように蠢く。
 レヴェッシュは自らの欲望を取り出した。脈打って血管が走り、そそり立っている。
「これをマルーンの中に挿れるんだけど、いいかな」
 訊ねられたけれど、うっとりとしていたわたくしは、意味をよくわかっていなかった。けれど、彼に請われたのなら、なんでも許してあげたい。
「いいわ」
 彼は屹立の根元を握りながら、欲望の先端でわたくしの裂け目を幾度も擦り上げた。……触れられる場所に、ひときわ快感を得てしまう処がある。和毛《にごけ》の下で、裂け目が始まるはざまの、突起?
「は、ぁん……気持ちいい……、レヴェっしゅ、これなに?」
 わたくしは息も絶え絶えになりながら、舌足らずな口調で問う。訊きながら、もっと快楽を得るために腰を高くあげ、彼の求めるまま太ももを大きく開いた。
「紅玉、とか、秘芽というらしい」
 彼が律儀に教えてくれた。
「女の人が感じて、男を受け入れるためにある粒なんだって」
「そうなの。……だったら、わたくしはレヴェッシュを受け入れるために感じているのね」
 呟いたら、彼もそうだよと肯定してくれた。
「挿れるよ」
 レヴェッシュは囁くと、さらにわたくしの脚を大きく広げた。めり、という音が体の中で聞こえた気がする。
「痛、……い」
 わたくしがうめき声を上げると、レヴェッシュは慌てた。
「ごめん、やめる?」
 パッと離れられてしまい、寂しくなる。わたくしは首を横に振った。
「やめないで」
「わかった。……なるべく、早くイくから」
 意味はわからなかったけれど、うんうんと頷く。
「息してて」
 言われるまま、必死に息を吸っては吐き出す。レヴェッシュの欲望はゆっくりとわたくしの中を進んでいき、とうとう止まった。
 は、は、とわたくしは荒い息しかできない。痛がるわたくしのために、レヴェッシュは気持ちよかった乳首や、秘芽を撫でくれた。徐々に体が快感を思い出す。すると痛かっただけの中に、じわじわと痒いような感覚が混じってくる。
「っ、動く、よ」
 レヴェッシュが腰を揺さぶると、わたくしの体も揺れた。
「マルーン、好き。愛してる」
「れヴ……、わた、くし、も」
 まだ痛みはあったが、無我夢中で彼を求めた。わたくしは彼のもので、彼はわたくしのもの。互いに相手が幸せであることを感じていた。そして、彼は果て……、今度はわたくしをゆっくりと高みにつれていってくれた。

(――つづきのお試し読みは各ストア様をご覧ください!)

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