「不安なんて忘れるぐらい、君をたくさん気持ちよくしてあげる」
あらすじ
「不安なんて忘れるぐらい、君をたくさん気持ちよくしてあげる」
初めての社交界で緊張に震える伯爵令嬢・アネット。煌びやかな会場の片隅で、不意のトラブルに巻き込まれた彼女は、過呼吸になりかけてしまう。そのとき救いのように差し出された手――それは、幼い頃に淡く恋心を抱いた騎士・カイルのものだった。まっすぐに惹かれ合った二人は、婚約を交わし、甘くも淫らな初夜を迎える。「ずっと欲しくてたまらなかった」愛しい人に深く触れられるたび、熱く火照っていく肌。アネットは、初めての快感に蕩けていく。優しいカイルになら、すべてを委ねられる……幸福感に満たされる彼女。だが、その裏で、二人の愛を引き裂こうと暗躍する影が忍び寄っていて――?
作品情報
作:さくら茉帆
絵:浅島ヨシユキ
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5/9(金)ピッコマ様にて先行配信開始!(一部ストア様にて予約受付中!)





















本文お試し読み
序章 ~夢は甘い現実となって~
彼の指先が、アネットの白い柔肌の上を優しく這っていく。
「あ……あぁ……」
彼――カイルの優しさに満ちたその愛撫に、アネットは心を絆され甘い声を上げる。
カイルは何度か体のラインをなぞった後、形のいい乳房に手を伸ばしてそっと触れた。
「あん……っ」
その刹那、甘い快感が込み上げてきて、アネットの体がピクンと跳ね上がった。
ずっと好きだった人と結ばれ、こうして肌を合わせている。異性に裸を見せることにまだ恥じらいは残っていたが、それ以上に彼に抱かれる喜びと幸せに満ち溢れている。
(何だか夢みたい……)
カイルの優しさと誠実さに惹かれ、アネットは一瞬で彼に恋をした。
他にも何人かの男性と交流したし、時には恋文を渡されたこともあった。しかし、それでもアネットの心はカイルだけに向けられていた。
いつかカイルと結婚できたら、どんなに幸せだろうか――アネットは幾度となく、そう願い続けてきた。そうしてその願いは叶い、めでたく彼と結婚することができた。
(夢……じゃないわよね……?)
今の自分があまりにも幸せ過ぎるものだから、これは現実ではないのではとふと考えてしまい不安になってくる。
アネットの気持ちが表情に出ていたのか、カイルは愛撫の手を止めて心配そうな面持ちを浮かべた。
「怖いのかい?」
そう尋ねてくる声音は優しさに満ちていた。自分を気遣ってくれることを嬉しく思う一方で、余計な心配をさせてしまったと申し訳なくなる。
「いえ、怖くないわ。こうしてあなたと結婚して、抱いてもらえてとても幸せよ。ただ、今感じているこの幸せは夢なんじゃないかって、急に不安になって……」
アネットは素直に自身の気持ちを吐露する。
するとその直後、カイルに胸の乳頭を指先で軽くつつかれた。
「ああん!」
それほど強い刺激ではなかったが、甘い痺れが胸の先端から生じて、アネットはたまらず甲高い嬌声を上げた。
「どんな感じがする?」
カイルはやんわりと微笑みながら、乳首をクリクリと捏ね回してくる。
「ん……っ! 気持ちいい……」
アネットは恥ずかしさを抱きつつも、喘ぎ混じりの声でそう答えた。
「だったら、君が今感じているその感覚は、夢なんかじゃなくて現実だよ」
「良かった……」
カイルの優しい言葉や微笑みに、アネットは安堵のため息をつく。
「不安なんて忘れるぐらい、君をたくさん気持ちよくしてあげる」
「あぁぁあっ!」
カイルの愛撫の速度が上がり、乳首がジンと甘く疼く。アネットは気持ち良さから、たまらず背中を仰け反らせた。
今抱いているこの幸せも快感も、全てが現実。それを改めて実感しながら、アネットは甘い快楽の波に溺れていった。
第一章 ~甘いときめきは再会と共に~
星月が煌めく夜空の下、ドレディア王国の王宮では舞踏会が開かれていた。
この日の舞踏会は友好国ソラリスとの同盟三十周年を祝うもので、シャンデリアが灯された大ホールはいつも以上に多くの人で賑わっている。
紳士淑女が音楽に合わせて踊ったり、飲み物を片手に話に花を咲かせたりしている中、一人の女性が柱のそばで休んでいた。
癖のない長い髪はまばゆいブロンド。丸く大きな水色の瞳は、彼女の愛らしい顔をより一層引き立たせている。華奢な体を包み込むドレスは、春の花のように明るいピンク色。
彼女――アネット・ゲインズはグラスの水を飲み干し、ほうっとため息をつく。
この舞踏会が、アネットにとって初めての社交界である。そのため、ダンスの間もずっと緊張しっぱなしで早くも疲れが出始めていた。
(ちゃんと社交界に慣れていかないと……)
病弱だった幼い頃に比べると、体調もだいぶ安定してきた。それでも今みたいに、男性と踊ったぐらいですぐに疲れるようでは駄目だ。もう少し体力をつける必要がある。
それに、自分は子爵家の一人娘である。もう十八歳になったので、そろそろ結婚のことも頭に入れて社交界に臨まなければいけない。
(結婚か……)
その刹那、アネットの頭に、ある少年の顔が浮かび上がる。
幼い頃に一度会った初恋相手。彼と結婚できれば嬉しいが、人生は夢物語みたいにそう上手くいくものではない。もう子供ではないので、夢よりも現実を見据えて相手を選ばなくては。
それに、政略結婚でも愛を育むことは可能である。たとえ好きな人と結ばれなくても、努力すればどんな相手でも円満な夫婦生活を築ける筈だ。
(でも、やっぱり結婚するなら好きな人としたい……)
いくらアネットがそう願っても、相手が同じ気持ちかどうかはわからない。何せ、初めて会った時からもう十年も経っているのだ。彼だって、他に好きな相手がいたとしても不思議ではない。
初めて出会ったのは療養で訪れた別荘地。アネットが元気になって、行く必要がなくなってから自然と疎遠になってしまった。向こうも親戚の見舞いで来ていただけなので、それ以外に用がなければ来る理由もない筈。
それに、あの頃のアネットはまだ八歳。恋をしているという自覚すらなかった。
(私がもっと早く自分の恋心に気付いて、彼にきちんと告白しておけばよかった……)
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