作品情報

無愛想魔術師(本当は王子)は死を待つあの子を救いたい~呪いを解くのは甘く激しい手ほどき!?~

「思い切り快楽に身を任せろ――それが、君の命を救うことになる」

あらすじ

「思い切り快楽に身を任せろ――それが、君の命を救うことになる」

下町育ちの貧民、下っ端の王宮騎士・ミンティはあるとき『第二王子の護衛』という大役に任命される。貴族階級の騎士が受けもつはずがなぜ?と疑問に思いながらも、キャリアのため奮闘するミンティ。だが警護の最中、王子を狙う賊によって謎の魔術をかけられてしまう……彼女が次にまぶたを開けると目の前には、氷のように冷たい表情をした見知らぬ美男の魔術師・クラムがいた。彼によると、ミンティは術によって明日には命を落とす――が、王子の命により解呪をしに来たとのこと。安心する彼女であったが、その方法とは交合術……初対面のクラムと性的に体を交えることらしく!?

作品情報

作:ハットリタクミ
絵:稲垣のん
デザイン:RIRI Design Works

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1.交合しないと死ぬ運命なんてなんてこった

「うそ、ここ、どこ?」
 青い空の下、手入れされた庭園のど真ん中、ミンティーア・ナパージュは青ざめた顔で立ちすくんでいた。
「もしかして私……迷子ーーーーっ!?」
 ここは、タタン王国の王都にある、王宮敷地内。九歳のミンティーア、通称ミンティは、この王国の騎士団の見習いとして働いている。
 今日は先輩騎士のお供として王宮を訪れたのだが、下っ端のミンティは邪険にされ、ほとんど放置された状態だ。もっとも、貧民窟出身であるミンティとは違い、貴族出身である同期は先輩に連れられて、いろいろと教授されているのだが。
(貴族ってだけが取り柄の、ナヨナヨ軍団!)
 彼らのいやみったらしい顔を思い浮かべ、ミンティは苦虫を噛みつぶしたような顔になる。
「だったら数合わせのために連れてくるなよ……」
 つまるところ、あからさまな差別を受けたミンティは、腹いせに待機場所から抜け出してきたのだ。
 はじめはとても楽しかった。なにせ、騎士団見習いとはいえ、普段はせいぜい、騎士本部までしか通うことのできない身分である。王宮なる場所に来たのは初めてだったからだ。
 豪奢な造りの建物に圧倒されながら、色とりどりの花を咲かせる庭園に誘われるようにして足を進めた。騎士見習いといえど、まだ十歳にもならない子どもだ。人一倍の好奇心の強さも相まって、興味の赴くまま歩き回ったのがあだとなった。
 まったく知らない風景に、ミンティは唖然となったままである。
「ひぃぃぃ急いで戻らないと! っていうか戻れるこれ!? いや、そもそもいなくなったことバレたら間違いなく鉄拳制裁だ!」
 機嫌の悪い先輩騎士からの鉄拳制裁があるかもしれないし、もっと最悪な事態が浮かぶ。見習い失格になるかも――。
「ひーーーーっ! まずい! ……ん?」
 よからぬ想像に悲鳴を上げると、近くで声が聞こえる。ミンティは恐る恐る声のする方向に足を向けた。雑木林を抜けると、そこは先ほどいた庭と違い、雑草が生い茂る薄暗い場所だった。
 同じ王宮内とは思えぬ落差に驚きながら、ミンティが息を潜めていると「なんとか言えよ、この根暗!」と嘲るような声が聞こえる。
 確実に人がいることはわかった。しかし、喋っている内容からあまりよい場面に出くわしたとは思えないあたりに、ミンティは己の不幸を嘆いた。それでも迷子から脱せられる可能性に賭け、足音を忍ばせて近寄ると、白色の小さな天井付きの東屋が見える。中には、自分と同じくらいの年頃の人影が二人。みすぼらしい見習い服のミンティとは違う、簡素ではあるが、綺麗で豪華な魔術師の格好だ。
「その顔なんだよ、虫唾が走る」
「生意気だ! お前、いやらしい存在のくせに!」
 聞いただけですぐにわかる。誰かを口汚く虐めている場面だと悟ったミンティは、いても経ってもいられなくなった。
「この野郎!」
 大体こういう台詞のあとには、暴力がつきものなのだ。ミンティは気配を消すことを忘れて、飛び出していった。どうやら二人がかりで一人を蹴ったり殴ったりしている最中で、ミンティは無我夢中で加害者側の二人を引っぺがした。そして、二人の足下にうずくまっていた哀れな被害者一人を、背で守るように立ち塞がる。
「だっ、だれだよおまえ」
「こいつ、抵抗してないよ。一方的に殴るなんて卑怯だ。喧嘩がしたいなら、私が相手になるけど?」
 立っている相手を見れば、ひょろひょろで卑屈そうな顔をした少年たちだった。シュッと軽く拳を飛ばしてにらみつけてやると、相手はヒィッと情けない悲鳴を上げて逃げてしまった。
「根性ないなぁ、あいつら」
 ふうとため息を吐いて、地べたにうずくまっていた人物を見やる。こちらも同い年くらいの少年で、先ほどの二人と同じく魔術師のローブを身につけていた。ぽかんと口を開け、ミンティを見上げている。ローブや口元についた血が鮮やかで、おそらくは抵抗しなかったのだとわかる。抵抗すればいいのに、と言いかけて、彼の手の震えに気がついて口を閉ざした。
 幼い頃の自分も、彼と同じように震えるだけだったことを思い出したのだ。貧民窟で、心ない賊や酔っ払いに暴力を受けたときのことを。
「怖かったんだよね」
 隣に座り、誰に向けるでもなく独り言のように漏らす。
「そうだ、あいつら戻ってくるかもしれないし、しばらくここにいるよ、私」
 はい、も、いいえ、も返ってこないのを、ミンティは勝手に肯定と受け取る。嫌がられなければいいや、という楽観的な思考が彼女にはある。
 とはいうものの、話題がない。
「……あのさ、ここどこ? 実は迷っちゃって……ハハ……」
 なので、まずは、自分から情報を開示することにした。照れ隠しの笑いを付け加えてみたが、結果はいかほどか。
「外れの庭園。ここは手入れされてないから、本当は入れないようになってるはずなのに……君、迷子の才能あるね」
 意外にも、彼は淡々と喋り始めた。
「才能あるのか、やった褒められた!」
「褒めてない」
 眉をひそめて、少年はぽつりと呟く。
「あんた……冷静だな」
 ミンティの感想に、彼は顔を上げる。長すぎる前髪が目を隠しており、口元に表情は浮かんでいない。まるで石像のような無表情だ。ぼそりと「よく言われる」と呟いた様子もやはり、石像だった。
「ところで君のその服……騎士見習い?」
 それでも石像少年に、会話を継続する意思はあるらしい。ミンティは「うん!」と胸を張った。
「でも、オマケで連れてこられて、ほっとかれて、つまんないから散歩してた。そういうあんたは、魔術師見習い?」
 ああ、と頷いた彼を見て、ミンティは「見習い同士だな!」と肩を叩いた。
「そうだ! 見習いのよしみで、王宮の入り口がどっちの方向か教えてくれない? ね? 頼むよ」
「いいよ。助けてもらったし」
「やった!」
 立ち上がり、少年の後をついていく。すいすいと雑木林の中を抜けながら、隙間を少年が指さす。そこには、王宮の正面門がわずかに見えていた。
「門だ! ありがとう、あんたは恩人だ~恩返ししないと!」
「こんなことで恩返しとか。むしろ、私が――」
「そうだ! またあんたが困ったら助けられるように、最強の騎士になってみせるよ!」
 拳を握り、ミンティは宣言する。それを見た少年は目を丸くし、ぽかんと口を開けた。
「最強……? なに、それ?」
「最強は最強。すごく強い騎士! そしたら、あんただけじゃなくて、困ってる人みんな助けられる」
 ミンティが騎士になろうとしているのは、単純に生きるためという理由もあったが、子どもらしい夢も理由の一つだった。強くあれば、虐げられることもなく、守りたいものを守れる。
 少年はフッ、と吹き出すが、そこに悪意はなく「思いも寄らない」と言った表情になる。
「単純過ぎる……でも、君、面白いね」
「面白い?」
「うん。最強になるなんて、周りにいないし、珍しい」
 そんなことを言いながら、いつのまにか整備された庭に出ていた。
「そうだ、あんたもすごい魔術師になればいいじゃん」
「えっ……?」
 少年が歩みを止めた。

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